TOP INTERVIEW
経営者に聞く
MICE機能が充実 札幌随一のコンベンションホテル【札幌パークホテル】
1964年に開業し、札幌を代表する名門ホテルの一つである札幌パークホテル(札幌市中央区)。中島公園に隣接し、市街中心部にありながら自然を感じられる立地環境と、札幌市内随一のコンベンションホテルとして、リアルな集いの場を長年提供してきた。4月1日、総支配人に就任した須田雅之氏に、同ホテルや地域の魅力を活かしたホテル運営を聞いた。
************************************
――須田さんのホテルマンとしてのキャリアは札幌から始まった。
須田 三井観光開発(現:グランビスタホテル&リゾート)に入社した後、最初の赴任地が札幌グランドホテル(札幌市中央区)でした。6年ほどの在籍期間に、宴会サービスや宴会予約、営業・セールス等を担当しました。
――その後、本社でレベニューマネジメントやセールスマーケティング、アセットマネジメント等を担当した後、2020年4月に札幌へ戻り、札幌グランドホテル/札幌パークホテルの要職を歴任した。
須田 ちょうど緊急事態宣言が発出されるかどうかという状況の中でした。その直後に一時休業というホテルの歴史においても前代未聞の事態に直面しましたが、ホテル運営をゼロベースで見直し、何か新しいことに挑戦する機会を得られたと前向きに捉えています。
――この挑戦の一環で、サステナブルな運営に力を入れている。
須田 2022年から、札幌パークホテルの屋上で養蜂を始めました。採取した蜂蜜はホテルメイドの生カステラの材料や朝食のパンの付け合わせとして利用客の皆さんに提供しています。
2021年からはホテルスタッフ用食堂の自営化も始めました。自社農園で栽培した野菜や、宴会・レストランで使いきれなかった食材等をメニューに活用しています。若手スタッフがメニュー開発に携わり、調理技術の向上や広い視野を持つ人材の育成、スタッフの働く意欲の向上等に繋げる狙いがあります。
――札幌パークホテルの強みとは何か。
須田 季節や自然を感じられる滞在体験が提供できることが当ホテルの強みだと思います。
また、当ホテルは札幌市内随一のコンベンションホテルとして、リアルな集いの場を長年提供してきました。3階大宴会場「パークホール」は最大広さ1165㎡、コンベンションや大規模会議・パーティー等、様々な用途に使われています。
――宴会場の機能は差別化になる一方で、宴会部門はコロナ禍の影響を最も強く受けた。今も影響は続いているか。
須田 感染リスクを懸念してリアル開催を控える動きは今でも一部ありますが、その動きも徐々に薄れています。
インセンティブや全国大会等の大規模会合は、いち早く回復しています。当ホテルでもこの4月以降の3カ月間で1000名規模が参加する会合を数回承りました。私たちも、コンベンションホテルとしての機能と運営ノウハウを武器に、東京の本社とも連携しながら国内外のMICEの受注獲得に力を入れていきます。
宴会料理の対応力も重要な強みです。1000名規模はもちろん、500名から600名規模の宴会を同時並行で行う際の料理提供にも対応するノウハウ・技術も備えています。
――札幌市は、いったん延期した新しいMICE施設の整備計画を今年4月から検討を再開した。
須田 世界的な団体・企業のイベントや会合を札幌で開催する機会は増えていると思います。交通アクセスの改善や施設の整備計画等、解決すべき課題もありますが、札幌や北海道の強みを生かした開催スタイルを提案する動きも活発になりつつあります。
――MICE施設の整備計画には、札幌パークホテルの再整備とヒルトンとの提携も含まれていた。本件のほかにも札幌は世界的ホテルチェーンの新規出店・リブランド出店が相次いでいる。
須田 まず、様々なホテルブランドが市場に参入することで札幌の知名度や認知度向上に繋がり、マーケット全体の活性化というポジティブな効果を期待しています。一方で、宿泊料金も底上げされる傾向にあります。ホテル運営会社としては収益向上の機会となりますが、実力以上の料金になることで顧客満足度の低下に繋がることを懸念しています。
私たちとしては、全部門を挙げてスタッフ一人ひとりの接客スキルやマインドを改めて磨き上げ、満足度の高い滞在体験を提供する取り組みをしたいと思います。そのために、スキルだけでなくモチベーションの向上も図り、スタッフにとって働きやすい環境を整備することが私の役割だと考えています。
再整備の検討が継続されていますが、札幌パークホテルとしては利用客の皆さんから「温かみのある接客に癒された」という言葉を頂けるようなホテルでありたいと思います。
(国際ホテル旅館2024年8月5日号)