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経営者に聞く

来年春「帝国ホテル 京都」が誕生 サービスの本質を浸透させる推進活動【帝国ホテル】
帝国ホテル(東京都千代田区)は、来年春に「帝国ホテル京都」(京都市東山区)を開業する。国の有形登録文化財に指定されている「祇園甲部歌舞練場」の敷地内にある「弥栄会館」を改修・増築してホテルが誕生するもので、祇園の文化・景観の維持に貢献しつつ、帝国ホテルの理念を具現化するホテルを目指す。4月1日付で代表取締役社長に就任した風間淳氏に帝国ホテルのサービス・おもてなしを継承する取り組みについて聞いた。
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——来年春に「帝国ホテル京都」を開業する。出店の経緯は。
風間 地元の方を通じて八坂女紅場学園(京都市東山区)を紹介されたことがきっかけでした。学園が所有する祇園甲部歌舞練場の敷地内にある弥栄会館をホテルとして活用する計画について、そのパートナーとして当社が候補に挙がっており、祇園の歴史や文化に理解を示し、地域と共生できる会社として、当社との協業が望ましいという意向があったとのことでした。
実は、京都に出店することは以前から模索していたものの、なかなか良い機会に恵まれず、弥栄会館の話を打診された時はとても驚いたことを記憶しています。
――京都に勤務するスタッフの採用は。
風間 すでに採用を済ませており、東京や大阪で実務トレーニングを受けています。帝国ホテルならではのサービス・おもてなしは、実務経験を重ねてこそ深く理解し、自分のものにできると考えています。業務の手順やルールはマニュアル等で共有できますが、ホテルを訪れる人の滞在目的は千差万別で、誰一人として同じではありません。その方たち一人ひとりに帝国ホテルらしいサービスを体験して頂くためには、スタッフがそのサービスの本質を理解し実践することが必要で、マニュアルだけではカバーしきれません。
——具体的に、サービスの本質の理解・浸透をどうやっているのか。
風間 1999年に「さすが帝国ホテル推進活動」を始動しました。この活動を通じて、行動基準と9つの実行テーマ――「挨拶」「清潔」「身だしなみ」「感謝」「気配り」「謙虚」「知識」「創意」「挑戦」――をスタッフ一人ひとりが実践し、浸透に努めています。
実際の行動・接客エピソードの中から、特に優れた事例を月次で選考し表彰・共有しています。さらに、この選考事例の中から、部長会および全スタッフによる投票によって年間大賞を選出しています。この表彰や投票が「さすが帝国ホテル」にふさわしい行動や考え方を広く共有する機会となっています。スタッフは、表彰されたエピソードをケーススタディとして、「何が『さすが帝国ホテル』にふさわしいのか」を考え、自身の感性と判断力を育むことに繋がっています。
——技術の進化や社会の変化が進んでいる。表彰されるエピソードに変化はあったか。
風間 私が知る限り、大きな変化はありません。時代や国・地域を超えて、人の心の〝琴線〟に触れる感性は普遍のものだと思います。
ホテル運営や施設管理の効率化に役立つテクノロジーは否定しませんし、私たちもホテルや会社の価値向上に繋がるものは活用しています。ただ、人の心の琴線に触れるのは人であり、テクノロジーではありません。今後、業務において人とテクノロジーがどうやって役割を分担し、共存するのかを考えて判断することが、私たちマネジメントに求められていると考えます。
私は「日本的価値観」と呼んでいますが、日本には礼儀や安心・安全を大切にする文化が根付いており、それが清潔な街並みや規律正しい社会を創り出しています。これに共鳴し、当たり前のものとして受け止める人たちが日本的価値観を醸成しています。誤解を恐れずに言えば、この価値観にシンパシーを感じて下さる方に選ばれるホテルでありたいです。日本人に限らず、日本に長く暮らしている外国人、日本の文化・風土に関心を寄せる外国人の方たちの中にも、そういった方は多いはずです。
東京、大阪、上高地、そして京都へと続く当社のホテルは、それぞれの土地や地域と共生することが基本です。今後も、地域と文化に貢献できるホテル経営を目指していきます。
(国際ホテル旅館2025年8月5日号から抜粋)
