TOP INTERVIEW
経営者に聞く

新経営体制で次の成長段階へ 地域と環境に根差したホテルアメニティ事業【シントワールド】
九州旅客鉄道(JR九州、福岡市博多区)は8月28日、同社が設立した地域特化型ファンド「JR九州企業投資」と、ジェイ・ウィル・グループ(東京都千代田区)の運営ファンドが共同出資する会社を通じて、ホテルアメニティ製造販売等を手掛けるシントワールド(熊本県八代市)の全株式を取得したと発表した。これにより、シントワールドの事業承継と成長支援を進め、地域経済の活性化を目指す。8月27日付で代表取締役社長に就任した藤井秀一郎氏に今後の展望を聞いた。
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――シントワールドへの出資の狙いは。
藤井 JR九州グループは鉄道を中核に、不動産・ホテル・外食・流通など多角的な事業を展開しており、現在は収益全体の6割超を非鉄道分野が占めています。
JR九州グループが保有する様々な知見やリソースを地域企業の支援に活かすことが、地域経済のさらなる発展に資すると考え、2021年に「JR九州企業投資」を設立。九州を拠点とする企業や地域密着型サービスを提供する企業に出資し、経営基盤の強化や事業継続を支援しています。
――ジェイ・ウィル・グループ(東京都千代田区)との共同出資とした理由は。
藤井 ジェイ・ウィル・グループは設立から20年以上の歴史を有する投資会社で、地方銀行等の国内金融機関から資金を募り、国内企業の事業承継や成長を支援しています。これまで約200社の支援実績を持ち、地域企業の持続的発展を後押ししてきました。JR九州グループの地域ネットワークとジェイ・ウィルの経営ノウハウが融合することで、強固な支援体制が整ったと考えています。
――シントワールドに出資した理由は。
藤井 シントワールドは1994年の会社設立以来、ホテル・旅館向けアメニティの製造販売業を行ってきました。歯ブラシやカミソリ等のドライアメニティの卸売から始まり、現在はシャンプーやボディソープ等のインバスアメニティも扱う、半製造・半商社型の企業へと成長。海外の提携工場で原液を製造し、当社の八代工場で充填・包装・出荷を行う体制を整えています。
取引先はラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館まで全国に幅広く、観光・旅行市場の好調を背景に事業は堅調に推移しています。一方、次の成長ステージを見据え、創業者の思いを引き継ぎながら経営基盤の強化を図るため、今回の出資に踏み切りました。
本拠地の熊本県八代市は県南部に所在する人口約12万人の中核都市です。古くから交通・物流の要衝として栄えた歴史があり、今も八代港では釜山や台湾との定期コンテナ航路が運航されています。
こうした背景から、八代市は製紙・金属・飲料メーカー等の工場が集積する工業都市でもあります。当社もこの地で原材料の輸入から製造・配送までを行い、国際的な物流拠点に所在する優位性を活かしながら、地域経済に貢献する意義お大きいと考えます。
――環境配慮型の製品をいち早く開発・販売してきた。
藤井 当社の成長を支えている柱の一つが「エコアメニティ」事業です。
歯ブラシやカミソリの原材料であるプラスチックに穀物の籾殻を混ぜることで、プラスチック使用量を約40%削減した独自素材を開発しました。再生プラスチックも組み合わせることで、ハイブリッドなサステナブル製品として多くの宿泊施設に採用されています。製造拠点であるベトナムの提携工場では、生産品質だけでなく労働環境や地域雇用にも配慮しています。
また、イタリアの提携工場ではオーガニックやヴィーガン認証を取得した原液を製造しています。この工場は再生可能エネルギーで稼働する等、環境負荷を最小限に抑えた製品づくりを進めており、環境への関心が高い欧米系の宿泊客が多いホテルを中心に高く評価されています。
――製品・ブランドのラインナップ充実も進める。
藤井 海外ブランドとの提携にも力を入れていきます。グローバルアメニティ企業との協業を通じて、ラグジュアリーホテル向け製品を国内市場に展開するとともに、宿泊主体型ホテルや温浴施設、介護施設等、幅広い業態向けの製品供給も進めます。
また、ロットに応じて独自ブランド・製品をOEMで開発する等、多様な顧客ニーズに柔軟に応える体制を整え、商品企画から製造、物流、営業、顧客対応までを一貫管理できる強みを活かしてまいります。
JR九州グループの広域ネットワークを活用し、既存取引先との関係強化とともに新たな販路開拓を進めたいと思います。特に、サステナビリティへの意識が高まる中、エコアメニティを核とした新商品展開で、環境と経済の両立を目指していきます。前社長も引き続き商品開発や海外交渉に携わり、従来の信頼関係と新経営体制の相乗効果によって持続的な発展を図ってまいります。
(国際ホテル旅館2025年11月20日号から抜粋)
