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経営者に聞く
スタッフにもウェルビーイングな環境を【SORANO HOTEL(ソラノホテル)】
2020年、JR立川駅の賑わいと昭和記念公園の緑豊かな自然が交じり合う立地に誕生した複合施設GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)。ここに同年6月、ライフスタイルホテルのSORANO HOTEL(ソラノホテル、運営:立飛ホスピタリティマネジメント[東京都立川市])が誕生した。ウェルビーイングタウンというGREEN SPRINGSのウェルビーイングタウンというコンセプトをホテルも踏襲し、環境にやさしくサステナブルな運営に努めている。4月1日付で総支配人に就任した中園純二氏に、同社が目指す運営・サービスの方向性を聞いた。
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――ホテル・レストラン業界で35年のキャリアがある。
中園 地元・長崎のシティホテルやリゾートホテルで、フロント、料飲、婚礼・宴会を一通り経験しました。その後は主に料飲部門で経験を積み、ハウステンボス(長崎県佐世保市)内の高級ホテルの料飲部や、福岡市内の高級レストランの支配人等を歴任しました。その後、再びホテル業界に戻り、大手ホテルチェーンでリブランド開業を4施設経験しました。ここでは特に、レストランの再開業において経験を活かした仕事ができました。
ソラノホテルの運営会社である立飛ホスピタリティマネジメントには、2020年に入社しました。ここでは料飲部のほか、宿泊部門のマネジメントも担当してきました。
――ソラノホテルは2020年6月8日開業。コロナ禍の中での船出となった。
中園 当ホテルを含む大規模複合施設「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」は、施設全体が「ウェルビーイングタウン」をコンセプトに、長期的な視点と社会貢献を念頭に置いた開発がなされています。ホテルもこれを具現化するようなバイオフィリックな空間デザインで、運営も環境にやさしくサステナブルであることに努めています。
移動や外出が制限されている状況下での開業は全く想定もしていませんでしたが、その間、立川市や周辺の市町、多摩地区に在住する地元客の皆さんに支えられながら営業することができました。
例えば、当ホテルは全長60mのインフィニティプールをはじめ、サウナやジャグジーを備えたスパ施設を備えています。コロナ禍の際は、遠方への旅行が叶わなかった地元在住のファミリー客が、このスパ施設をたびたび利用して下さいました。ロビー階のオールデイダイニングDAICHINO RESTAURANT(ダイチノレストラン)も、地元の女性グループを中心に頻繁にお使いいただきました。
レストランは、多摩地区の食材を中心に適地適作の食材選びをし、素材の良さを活かした料理を提供しています。私たち自ら食材づくりにも挑戦し、那須町でオリジナル米の栽培をしています。普段は契約農家の方に管理をお願いしていますが、当ホテルのスタッフも折に触れて現地へ足を運び、田植えや稲刈り等をお手伝いしています。
――スタッフの働き方にも配慮している。
中園 ウェルビーイングな環境は、スタッフに対しても用意すべきものだと考えています。
規定に定める休日数の確保や、残業が発生しないようなシフト管理、希望があれば副業もOKとしています。同時に、業務の効率化と高付加価値なサービス提供の両立に向けて、顧客情報のデータベース化を推進し、スタッフ間での情報共有にも努めています。
当ホテルのADRは多摩エリアでは珍しく平均3万円を超えていますが、この価値に見合った宿泊体験の提供には、客室の居住性や機能性、備品の充実といった要素だけでなく、相応の価値があると感じさせる接客品質が不可欠です。特に、一人ひとりにパーソナライズされたホスピタリティサービスの提供には、顧客情報のデータ管理と共有が重要になると考えます。
スタッフ一人ひとりの能力を活かせるような職場作りが私の仕事だと考えます。
――今後の運営方針は。
中園 ソラノホテルの運営を通じて培ってきたホスピタリティのスキルやノウハウ、そしてソラノホテルのコンセプトを、ホテル滞在以外の方法で体験できる機会を多く作りたいと考えています。
その一つとして、現在取り組んでいるのがプライベート・ブランド商品の開発。当社は2021年、立川市内にブルワリーを開業してビール製造免許を取得。クラフトビールの製造販売を始めました。さらに今年、北海道の余市で9ヘクタールの土地を取得しました。ここにワイナリーを設立し、来年を目途にぶどうの栽培を始め、早ければ3年後の2027年に醸造着手を目指します。
また、立飛グループは今年4月、昨年末に閉館した「パレスホテル立川」の土地建物を取得しました。これから改修工事を行い、再来年を目途に再オープンし、当社が運営を担当する予定です。
立川に根差した企業として、地域社会・経済への貢献を強く意識した事業を展開してきましたが、今後もさらに地域に求められる役割を果たしていきたいと思います。
(国際ホテル旅館2024年8月5日号)