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経営者に聞く

宿泊運営代行・開業支援で急成長【ホテリエ】

宿泊運営代行・開業支援で急成長【ホテリエ】

ホテル・民泊の開業支援および運営代行を手掛けるホテリエ(福岡市中央区)は、「グームホテル」「ゾンクホテル」「彩(いろどり)ホテル」などを展開。福岡市内をはじめ九州および東京で85カ所の運営に携わっている。
コロナ禍直前の2019年にホテル事業に参入し、わずか6年あまりで急成長を遂げた同社の強みを、コンサルティング営業部 プロデューサーの八山健一氏に聞いた。

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――宿泊施設の開業支援・運営代行事業を始めたきっかけは。

八山 2019年8月、当社グループが所有・管理していた賃貸マンションの空室を使って宿泊事業にチャレンジしたのが始まりです。

その物件は福岡市の中心部に近く、旅行者の宿泊需要を取り込めるのではないかと考え、たまたま生まれた退去部屋1室を使って民泊運営に取り組みました。部屋の設備はそのまま使い、家具やベッド、家電などを配置して、民泊予約サイトに掲載したところ、続々と予約が入るようになりました。

家賃が平均7万円ほどでしたが、民泊として販売した部屋は月30万円ほどを売り上げました。もちろん、家具・家電の購入費用や清掃メンテナンスなどのコストが発生するので全てが利益になるわけではありませんが、宿泊事業への本格参入を後押しするきっかけになりました。現在、この部屋は「グームホテル博多天神」として運営し、部屋数も36室に増えています。

グームホテルの開業と同じ時期に、賃貸マンションを1棟借り上げることになり、こちらは全ての部屋を宿泊施設として運営することにしました。これが現在のゾンクホテル中洲(福岡市中央区)です。ZONK=英語で〝酔いどれる〟を意味するブランド名の通り、天神・中洲・博多で地元の食や美酒を満喫し、福岡の魅力に酔って頂きたいことに由来しています。1棟借り上げのため、共用部には椅子やランドリーなどを設置しています。

現在、福岡市中心部では、このグームホテルとゾンクホテル、そして南栄開発(熊本市東区)との共同プロジェクトである一棟貸し宿泊施設「彩(いろどり)ホテル」を展開しています。福岡市内の施設は、いずれも客室稼働率が85%以上を維持しており、好調が続いています。ほか、東京・宮崎・鹿児島の3都市でホテル運営を受託しています。

――御社のホテル運営における強みは。

八山 宿泊運営における多様なケースに対応し、受け入れることができます。

当社事業の特徴として「賃貸マンションの民泊化」「ホテルの新規開業支援」「有人ホテルの無人化提案」の3つが挙げられます。

一つ目はさきほど説明した通り、既存の賃貸物件を活用した宿泊施設への用途転換を企画・実施します。デザイン性と事業性、社会性を兼ね備えた空間づくりにワンストップで対応し、不動産の新たな価値創出を図ります。これにより、空室対策や収益性向上といったオーナーの課題解決に貢献します。

こうした実績を踏まえて、ホテルの立ち上げもゼロからサポートします。開業に向けた企画・設計・運営体制の構築まで伴走します。

当社の運営ホテルは無人チェックインシステムを採用しています。来館した宿泊客は館内備え付けのiPadでチェックイン手続きを行い、コールセンターとのビデオ通話を通じて部屋の鍵番号を取得します。この点は、むしろ「気軽に利用できる」点が好評になっていると感じます。

――無人運営のノウハウも蓄積した。

八山 コロナ禍を機に、福岡市内の当社運営ホテルは完全無人化に移行しました。現在、大名・博多・中洲の3拠点に24時間対応可能な体制を整え、この3拠点で50以上の施設を管理しています。

法令順守の観点から、無人運営でも24時間対応可能な体制の整備が不可欠ですが、これを各施設に分散させるのではなく、拠点を集約することでスリムな運営を実現しています。

実は、この拠点対応については外部企業とのシェアや夜間サポートの共同化など、柔軟に連携することも視野に入れています。弊社のビジョン「すべてのホテルの応援団」に沿って、システムの部分的な共同利用なども可能性として考えています。現在は福岡市を中心に事業展開していますが、将来的には宿泊需要と住宅供給が見込める地域、具体的には大都市圏や中核都市への進出も検討します。

 

(国際ホテル旅館2025年6月5日号から抜粋)