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経営者に聞く

未来型のホテルオペレーションの実現へ【TechMagic/CSSホールディングス】

未来型のホテルオペレーションの実現へ【TechMagic/CSSホールディングス】

調理ロボット「I-Robo」シリーズの開発・販売を手がけるTechMagic(テックマジック、東京都江東区)は、ハードウェアとソフトウェアを高度に融合させた食分野のロボットソリューションを提供している。昨年12月、CSSホールディングス(東京都中央区)と戦略的パートナーシップを締結。両社の知見と技術を掛け合わせ、未来型のホテルオペレーションの実現を目指す。この狙いや意義について、TechMagic代表取締役社長・白木裕士氏と、CSSホールディングス代表取締役社長・水野克裕氏に聞いた。

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――I-Roboシリーズの開発背景と特長とは。

白木 I-Roboは、食材の攪拌・加熱から調理後の鍋の洗浄に至るまで、一連の作業を自動化する調理ロボットです。炒飯や野菜炒めなどの炒め物料理、パスタやラーメンなどの麺料理に対応し、職人のレシピや調理技術を忠実に再現します。メニューに応じて加熱温度・時間、鍋の回転速度や方向を柔軟に制御することで、調理の精度と品質を高めることができます。

昨年夏に発売した新モデルの「I-Robo2」は、従来モデルよりもコンパクトで、洗浄性やタッチパネルの操作性も向上しました。安全ガードや循環フードといったオプション機能を備え、多様なニーズに応じたカスタマイズが可能です。

――大手飲食チェーンでも導入が進んでいる。

白木 I-Roboシリーズは1回あたり2〜3食分を調理する個食調理を支援するロボットとして開発されました。調理工程を自動化することで、提供コストの最適化と高品質な料理の安定提供が実現します。

飲食業界では、FL比率(売上高に対する食材費と人件費の合計)が重要な経営指標とされています。一般的にFL比率は60%以下が理想と言われますが、昨今の原材料費高騰や人手不足などにより、比率を抑えることが難しくなっています。

――このソリューションをホテル運営にも応用する可能性を模索する。

水野 当社はこれまで、独自のノウハウで労働生産性の向上に努めてきました。特にスチュワード事業においては、各ホテルの厨房の設計や運用が異なり、ノウハウの汎用化が難しいという課題がありました。

TechMagicは、ハードとソフトを高度に統合し、オペレーションの最適化を可能にするソリューションを提供しています。私たちが直面している課題の解決に寄与してくれるものと期待していますし、将来的には、ロボティクスや自動化技術を活用し、ホテルにおけるバックヤード業務全般の抜本的な改革の後押しに繋げたいと考えています。

――業務の効率化・省人化だけにとどまらず、新たな価値の創出にも繋がる。

水野 休眠状態にある厨房設備も、ロボティクスの導入によって再活用できるようになります。

例えば、調理人材が手薄になる時間帯でも調理を行えるようになれば、ルームサービスや従業員の食事が24時間提供できるようになり、厨房のアイドルタイムを使ったテイクアウト・デリバリーメニューも作成できるようになります。新たな収益機会の創出や福利厚生の充実などが期待できます。
白木 ロボティクスの大きな価値の一つは「時間と場所を超える」ことです。トップシェフのレシピや調理技術をデジタルデータとして保存・共有することで、全国どこでもその味を再現できます。

(国際ホテル旅館2025年5月20日号から抜粋)