TOP INTERVIEW

経営者に聞く

無印良品の世界観 宿泊で体感「MUJI room」【良品計画】

無印良品の世界観 宿泊で体感「MUJI room」【良品計画】

良品計画(東京都文京区)は9月5日、宿泊施設の中に無印良品の世界観を体感できる空間をつくる新プロジェクト「MUJI room」を立ち上げると発表した。既存のホテルや旅館、貸別荘等の改装・リノベーションを良品計画がプロデュースする。店舗の内装設計や「無印良品の家」事業等を通じて培った建築・内装の企画施工のノウハウや技術を活かし、無印良品のある暮らしを体感できる場をつくる。

宿泊事業者からの依頼を受け、空間・サービスのデザインや設計等を請け負う「受託型」と、良品計画が初期投資からPRと集客、予約管理、宿泊客向けのサービス・アクティビティの開発等を引き受ける「地域共生型」の二つのスキームを用意。同社が掲げる「感じ良い暮らしと社会」の実現に向けて、地域の課題や価値観を共有し、活性化と共生を図りながら無印良品の世界観を体感できる滞在体験の提供を目指す。

ソーシャルグッド事業部 ライフスタイル事業 MUJI STAY担当課長の廣川剛史氏に聞いた。

 

――良品計画は、東京・銀座のMUJI HOTELや、遊休資産を活用した滞在型宿泊施設MUJI BASE等を展開。この流れにおけるMUJI roomの位置づけは。

廣川 当社の宿泊事業「MUJI STAY」は「地域に溶け込むもうひとつのくらし」をコンセプトに、地域における無印良品の世界観を体感できる滞在体験を提供しています。具体的には、地域文化のショーケースとして無印良品が施設全体をプロデュースするMUJI HOTEL、空き家や廃校等を活用した滞在型宿泊施設のMUJI BASE、今年でオープン30周年を迎えるMUJI Campを展開してきました。

この活動の中で、既存のホテル・旅館等の中にも、旅行スタイルの変化等に対応しきれない等の課題を抱えているところがあることが分かりました。こうした宿泊事業者のサポートとして、既存宿泊施設の改装をプロデュースする「MUJI room」を企画しました。

地域共生型スキームの1号店である坂本屋は、1928年(昭和3)に創業した吉野山の門前宿で、長年、地域観光および経済において重要な役割を担ってきました。今回、施設の一部を当社が借り上げ、改装のほか、集客・宿泊予約もAirbnbを通じて当社が管理しますが、来館客への接客や客室清掃等は、引き続き坂本屋に対応して頂きます。

――M&Aやオペレーター変更とは異なる「宿泊事業の再生」の新たな選択肢となる。

廣川 宿泊施設と当社の活動が融合し、双方の負担を抑えながら収支バランスが取れるスキームで、地域も含めてポジティブな相乗効果と好循環がもたらされることをイメージしています。

地域と共生した宿泊事業の開発と運営はMUJI BASEを通じて実績とノウハウを蓄積してきましたが、MUJI roomにおいては、宿泊施設の皆さんが地域のネットワークを確立されていると思います。これに基づいた地域の食・産業・文化を活かした滞在体験や宿泊サービスを、当社がキュレーション(編集)して提供できると思います。

――都市部のホテルにおいては受託型のニーズも期待できる。

廣川 いわゆるコンセプトルームのような形態ですが、一時的な需要喚起に終わらず、持続的に宿泊需要を掘り起こすような取り組みを想定しています。

MUJI roomの強みの一つとしてインバウンドへの訴求力の強さが挙げられます。現在、無印良品は国内外に1305店舗を展開し、うち半数以上の682店舗が海外にあり(今年8月末時点)、海外でも広くブランドの認知が進んでいます。

MUJI STAY事業においても東京・銀座のMUJI HOTELは外国人客比率が90%、千葉・鴨川の古民家を改装したMUJI BASE KAMOGAWAも半数から7割が外国人客です。

MUJI roomの受託型スキーム第一号となったリーベルホテル大阪からは、ESGの観点からも評価されたと聞いています。MUJI roomには環境・社会に配慮した無印良品の家具・家電やアメニティ等を設置し、内装材にも地域素材を採用。環境負荷が大きい素材は極力使わないようにします。

――MUJI roomと親和性が高いホテルブランド・客室タイプは、

廣川 無印良品が志向する暮らしやすさ=居住性の高さを追求する点では中長期滞在を想定した機能を備えた客室タイプと相性が良いと思います。

 

【MUJI room 二つのスキーム】

◆受託型◆

既存宿泊施設の客室等について、「新しい暮らしの共創の場」をコンセプトにした改装・リニューアルを行う。良品計画とMUJI HOUSEが企画・設計・施工を請け負い、施設側が良品計画に売上額に応じたライセンス料を支払うスキーム。客室面積20㎡から40㎡ほどの広さ、ミッドスケールからアップスケールのカテゴリを想定している。

 

◆地域共生型◆

良品計画がホテル・旅館の空間の一部を借り上げてリノベーションする。集客や予約管理、宿泊プランやアクティビティ等の企画造成も良品計画が行う一方、客室清掃等の現場業務は宿泊施設側が対応することを想定する。

(国際ホテル旅館2024年10月20日号から抜粋)