TOP INTERVIEW
経営者に聞く

知見やノウハウを共有する新プロジェクト【CSSホールディングス】
ホテル・レストランの食器を洗浄・管理するスチュワード事業、ホテルの朝食レストランや従業員食堂などの運営を受託するフードサービス事業、館内の音響・映像設備の運用支援などを手掛ける空間プロデュース事業を展開し、ホテル運営をバックヤードから支えてきたCSSホールディングス(東京都中央区)。昨年12 月に創業40周年の節目を迎え、これまで培った実績や知見、ネットワークを活かし、新たな価値を創出すべく、新たなプロジェクト「X-value(クロスバリュー)ユニット」を始動した。代表取締役社長CEOの水野克裕氏にユニット立ち上げの狙いと具体的な取り組みを聞いた。
************************************それぞれの知見を横断的に活用する
――昨年12月に発表した2025年から2027年のCSSグループ中期経営計画「Go Beyond! next20」では「基軸事業の強化」「人材育成の強化」「ESG課題への取り組み推進」「X-value(クロスバリュー)ユニットによる新たな価値創出」を掲げた。
水野 当社はホテルやレストランの食器を洗浄・管理するスチュワード業務を担う会社として1984年に創業し、現在はスチュワード事業のほか、フードサービス事業と空間プロデュース事業を展開しています。
現在のホテル業界は、人材基盤づくりへの難易度と複雑性が高まっています。当社はこれまで、事業を通じてテル運営のバックヤードを支え、業界が抱える人手不足の課題に対応してきましたが、今後はこれに加えて、課題解決に繋がるプラットフォームの役割を担いたいと考えています。
そこで、当社ならびに取引先のホテル・レストラン、社外のパートナー企業と相互に連携し、それぞれが持つ知見やノウハウを横断的に結び付けたり掛け合わせたりして、課題解決や新たな価値創出に繋げることを目的とする「X-valueユニット」を創設しました。同ユニットは各事業のベテランが特命特化で活動し、彼らの経験と人脈を活かしながら運営支援の領域をさらに広げたいと考えています。
自動調理技術のベンチャーと提携
――具体的なプロジェクトも動き出した。
水野 昨年12月、調理ロボット事業を展開するTechMagic(テックマジック、東京都江東区)との間で戦略的パートナーシップに合意しました。
テックマジックは炒め調理ロボット「I-Robo2」や盛り付けロボット「M-Robo」などを開発し、料理の味や品質を維持しながら調理工程の省人化やコスト削減を図る事業を手掛けています。すでに大手飲食店チェーンなどへの導入が進んでいますが、今回、当社と連携してホテルの調理・料飲部門のさらなる労働生産性向上に寄与したいと考えています。
このようなテクノロジーの持つ可能性を、人が担っていた業務をロボットに置き換えるという単純な話で終わらせずに、業務のプロセス全体を合理化する可能性によって、業界が提供する新たな価値づくりにヒューマンリソースを集中させることに貢献できればと思います。基軸事業も人的投資やESG課題に取り組む
――基軸事業のさらなる強化も進める。
水野 グループ各社では、従業員の処遇改善、教育研修、職場エンゲージメント強化、海外人材も含めた社員採用、業務フローの分析と再構築など、働きやすい環境づくりと人材育成への投資を積極的に実施します。
ESG課題にも取り組み、多様な人材の活躍支援や環境負荷軽減、従業員の健康や安全への配慮、ガバナンス強化などを通じて、社会課題の解決を事業価値と結び付けて提供する力をグループ全体で高めていきます。 世界に冠たる日本のホテル・観光業界のホスピタリティ品質は、気づかいや心配りが重要な基礎を成しています。たちは、『世界の“おもてなし”を進化させるパートナー』としてお客様・業界の期待を超えるサービスのご提供を引き続き目指してまいります。
事業領域別の戦略
【スチュワード事業】
ホテルの新規開業計画や国内での大型イベント開催など、事業機会の余地は引き続き大きいと見ています。働き方や社会保障環境の変化も見据えつつ、X-valueユニットと連携しながらスチュワード人材の可能性を広げ、キャリアデザインを描けるような環境整備とコンサルティング・共創事業にも取り組みます。
業務サポートを実現できていない地方への進出や客室清掃などの業務分野では、M&Aによる事業拡大なども視野に入れています
【フードサービス事業】
ホテルの新規開業が相次いだことなどから、ホテルの朝食レストランおよび従業員食堂の受託は順調に伸びています。また、高齢者向けのライフケア市場も拡大し、新たな商品・サービスのニーズも活発なことから、さらなる新規開拓に向けた営業人材の強化を図ります。
調理の自動化技術や完全調理済食品などの活用を進め、コストパフォーマンス評価を維持しながら対応していきます。
【空間プロデュース事業】
音響設備や監視カメラには堅実な更新需要があり、新たな製品・ソリューションの裾野も広がっています。また、エンターテイメントの感動を演出するトータル空間演出システムのニーズも拡大しています。
当社はマーケティングの多様化と収益マネジメントの強化を図り、設計施工・保守などのパートナーと連携し、トータルプロデュースの強みを発揮していきます。他事業の顧客関係性を活かしたソリューションの提案や、産学連携の推進による「環境」をコンテンツ化する空間プロデュースにも力を入れていきます。
(国際ホテル旅館2025年2月20日号より)