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資源循環運営に挑戦「eco庭プロジェクト」【庭のホテル 東京】

資源循環運営に挑戦「eco庭プロジェクト」【庭のホテル 東京】

宿泊客が滞在中に不要となった衣類等を回収し、資源循環サービスに提供する取り組みを始めた庭のホテル東京(東京都千代田区)。この取り組みを始める前から、廃棄物の削減と再利用に向けた取り組みを独自に進めてきた。

昨年2023年に始動した「eco庭プロジェクト」は、ホテルの屋上に菜園を作り、野菜や果物、ハーブを栽培。収穫物は館内レストランで提供する料理に取り入れられている。

プロジェクトは前年2022年の秋から冬に「腐葉土」を作ることから始まった。館内の庭で発生する大量の落ち葉を活用する方法として腐葉土作りを発案したのは、「趣味が家庭菜園」と語る総支配人の海老沼悟氏だ。

「当ホテルの4つの庭は、ホテルを象徴する存在でもある。自然と建物が調和する当ホテルならではの空間を守り続けるため、土壌を良くする腐葉土を作ったが、初年度に20kg以上を生産し、庭以外で活用できないかと考えたときに、ひらめいたのが屋上菜園だった」と海老沼氏。

腐葉土に、調理場から出るくず野菜やお茶・コーヒーの出涸らし、米ぬか等を混ぜ合わせ発酵させて有機たい肥を作った。プランターには宿泊客が置き捨てていったスーツケースを活用し、広げるだけでなく、ボディの一部をくり抜いて土を入れることで、深く根を張る植物も育てることができる。水やりや収穫にはホテルスタッフも参加し、サステナビリティの意識を根付かせることにも繋がっている。

さらに、今年2月からは養蜂を始めた。果菜類の受粉にミツバチの力を借りるためで、養蜂および農業の関連サービスを提供するBeeslow(東京都江東区)の協力を得て、屋上菜園の一角に養蜂箱を設置している。現在までに73kgのハチミツが採れ、これも来月から館内レストランで提供する予定だ。

「レストランは近隣のオフィスワーカーや地域住民の皆さんの利用も多く、屋上菜園で採れた食材を使ったメニューを楽しみにしているとの声を多数頂いている。ホテルの持続可能な取り組みが、地域の環境保全に繋がり、ひいてはホテルの価値向上にも繋がる。そんな好循環を作りたい」と海老沼氏。

(国際ホテル旅館2024年9月20日号)