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経営者に聞く

五感を揺さぶる体験価値の創出を【西武・プリンスホテルズワールドワイド代表取締役社長 金田佳季氏】

五感を揺さぶる体験価値の創出を【西武・プリンスホテルズワールドワイド代表取締役社長 金田佳季氏】

――前年に続き、宿泊業界の環境は良い状況が続いている。

金田 インバウンドの成長が市場全体を力強く下支えしています。当社が国内で運営するホテル・レジャー施設においても、東京・京都・大阪を中心に大きな恩恵を受けました。

昨年2025年は宴会・MICE需要がコロナ禍前を超える水準に伸びました。都市部にある当社運営ホテルの多くは宴会場を併設していますが、長年培ってきた運営ノウハウは、引き続き当社の特徴・強みとして活かせると考えています。

――地方都市やリゾートエリアの運営状況は。

金田 着実に回復しており、特にスキーリゾートはインバウンド需要の伸びが目立ちます。日本の雪質は世界的にも評価が高く、当社においても苗場や志賀高原、雫石等は成長余地が大きいとみています。

一方、地方の中にはインバウンド需要が十分に行き渡っていない「アンダーツーリズム」のエリアも少なくありません。これらのエリアは、今後、大きなポテンシャルがあると捉えています。

――昨年9月、 「エースホテル」運営会社の取得を発表した。改めて取得の狙いは。

金田 主に3点あります。一つはネットワークの拡大、そして顧客基盤の拡大、最後にエースホテルの持つブランド構築・運営ノウハウを学べることです。

エースホテルは米国シアトル発祥で、非常に独自性の高いライフスタイルホテルを展開しています。特に「テイラーメイド」の理念を大切にしており、出店する地域を徹底的にリサーチし、土地の文化や空気感を反映したホテルを創ってきました。「人とカルチャーが混ざり合う場」を目指し、世界中で多くのファンを獲得しています。

画一的な〝cookie cutter(クッキーカッター)〟ではなく、地域に根差したホテルづくりは、当社も意識してきたことであり、この点、相互に親和性を感じられる点です。エースホテルとしても、独自のDNAを継承していけると考え、当社をパートナーに選んだのではないかと思います。

エースホテルは日本では2020年に京都を開業し、2027年には福岡での開業を控えています。今後、ともに世界各地への展開を目指す上で、両社のネットワークが融合することで、相互にグローバル展開を加速させ、顧客層の幅も広がると見込んでいます。

当社としては、エースホテルの独自性を維持したいと考えています。同時に、設計や空間デザイン、企画・運営等のノウハウをわれわれが学ぶことで、当社の運営ホテルに新たな体験価値を創出できると期待しています。

 

――旅行における価値観も変化している。

金田 西武グループは、持続可能な社会の実現に向けた取り組み「サステナビリティアクション」において、マテリアリティ(重要テーマ)の一つに「五感を揺さぶる体験価値の創出」を掲げています。

社会や生活にデジタル技術が浸透していますが、この流れが進むほど、視覚や聴覚だけでなく、嗅覚、味覚、触覚も使ったリアルな体験への欲求は高まると考えています。

旅も同様で、訪れた街の空気や風、文化に触れる体験が重要になります。最近はインバウンド旅行者の間で、陶磁器を修復する「金継ぎ」や、とんかつを「食べる」だけでなく「作る」体験が人気だと聞きます。こうした日本文化を深く体験する機会を、ホテル滞在と組み合わせて提供したいと思います。

 

(国際ホテル旅館2026年1月20日号から抜粋)