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経営者に聞く

割烹料亭のルーツ 食の強みを生かした朝食サービス【呉竹荘ホールディングス】

割烹料亭のルーツ 食の強みを生かした朝食サービス【呉竹荘ホールディングス】

呉竹荘(浜松市中央区)が運営する「くれたけホテルチェーン」が、朝食サービスの強化を進めている。地元食材をふんだんに使い、各ホテル内に併設された厨房で作られる「手作りの味」に加えて、同社の日本料理統括料理長・百谷正喜氏が監修し、セントラルキッチンで製造した「料亭の味」の提供を開始。各ホテルのビュッフェ台にはバリエーション豊かな料理が並べられている。

取締役副会長の山下純乃氏に、呉竹荘のこだわりを聞いた。

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――呉竹荘は割烹料亭を発祥としている。
山下 呉竹荘は1948年(昭和23)に割烹料亭として創業し、その後、結婚式・宴会事業に着手。1995年(平成7)、本館の隣接地に「ホテルヴィラくれたけ」を開業してホテル事業に参入し、現在は「くれたけホテルチェーン」として国内外にフルサービスホテルや宿泊主体型ホテルを出店しているほか、レストラン等も含めて60店舗以上を展開しています。

この間、「料理」と「おもてなし」は一貫して当社のコアな価値として位置付けてきました。

――くれたけホテルチェーンでは、一部店舗を除いて朝食を無料で提供している。予算や調理スペースに制限のある中で満足度の向上を図るのは簡単なことではない。
山下 地域の食材・食品を積極的に取り入れる「地産地消」に努め、地元在住者を中心とする朝食専門スタッフが現場で調理した「手作りの味」を提供しています。食材の一部はホテルが地元の市場や店舗から直接仕入れているものもあります。いずれも地域に根差した家庭料理をベースに、味付けはもちろん、食材の使い方や調理方法などについても〝主婦の知恵〟を活かし、その地域でしか提供できない料理を日替わりで用意しています。

――こうしたメニューに加えて、セントラルキッチンで調理した「料亭の味」の提供も始めた。
山下 日本料理統括料理長の百谷が監修した料理を、一部地域を除いて各地のホテルに定期配送しています。社内で代々受け継がれてきた秘伝の出汁と厳選した食材を用いたプロの料理を、季節メニューも含めて常時20品ほどを用意しています。各ホテルへの定期配送は一昨年・2022年の春から始め、現在は週2回のペース、合計で月間6トンほどを供給しています。

――セントラルキッチンの設置は、コロナ禍がきっかけだった。
山下 呉竹荘の本館2階、もともと宴会場だった約130坪のスペースを全面改装し、セントラルキッチンを新設しました。大量調理と配送を可能にするためHACCPに対応した設備を完備し、急速凍結機も導入。業務がスムーズに進められるよう、動線も調理部門の意見を聴きながら整備しました。

コロナ禍では、本館の主力事業である宴会・婚礼の実施が難しい状況が長く続きました。苦境の中で試行錯誤を重ね、お弁当販売が好調だったことなどから、呉竹荘の食をより多様なシーンで楽しんで頂くことを発案。セントラルキッチンを整備しました。

――呉竹荘グループならではの強みになる。
山下 くれたけホテルチェーンの朝食サービスで料亭の味を提供することは、当社ならではの強み・独自性になっています。各ホテルで朝食が好評を博し、それを強みにリピーター獲得にも繋がっていることから、セントラルキッチンと各ホテルでは飽きさせないための工夫・努力も重ねています。

ホテル・結婚式場事業はコロナ禍を経て大きく変わりましたが、当社の場合、ルーツである「食」の価値が苦境の経営を支えてくれました。今後も呉竹荘グループならではの強みを活かした展開を続けたいと思います。

 

(国際ホテル旅館2024年12月5日号)