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経営者に聞く

福島県双葉町にリトリート型ホテルが誕生【FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA総支配人 練生川裕一氏】

福島県双葉町にリトリート型ホテルが誕生【FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA総支配人 練生川裕一氏】

大和ライフネクスト(東京都港区)は6月1日、FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA(福島県双葉郡)を開業する。双葉町の中野地区復興産業拠点に位置し、地域の再生と交流拠点としての役割を担う。

出店の経緯や運営のビジョンを総支配人の練生川裕一氏に聞いた。

 

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――双葉町にホテルを出店した経緯は。

練生川 大和ハウスグループは、東日本大震災の発生直後に応急仮設住宅の建設に着手する等、被災地の復興支援に長く携わりました。

福島県双葉町は、2022年に避難指示が一部解除されて以降、中野地区を中心に産業団地の整備や企業誘致等にさらに力を入れています。私たちも、こうした取り組みに貢献できないかを社内で検討していた中で、東京都内でカンファレンス機能を有するホテルの運営実績があること、今後、 双葉町にもビジネス旅行や国際会議・企業研修の需要が見込まれること等を踏まえて、本プロジェクトが始動しました。

 

――出店する中野地区復興産業拠点は、どのような状況にあるのか。

練生川 私たちはあくまでも立地企業の一社ですが、産業交流センター(F-BICC)や東日本大震災・原子力災害伝承館等が整備され、復興と未来創造の拠点として再構築が進められています。今年4月には福島県復興祈念公園が開園し、震災犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶と教訓の伝承、そして復興に対する強い意志を発信する役割を担うとのことです。

現在、すでにいくつもの企業が事務所や拠点を構えているほか、建設工事も進んでいます。福島県外から誘致された企業も多く、企業集積によって産業の中心地となり、雇用創出や観光を含む交流人口の増加が期待されています。

 

――観光の見込みは。

練生川 双葉郡は大地震・津波、原子力災害、そして風評被害という複合災害に見舞われました。 地域には、 その事実や教訓、復興への挑戦を後世に伝える伝承館や震災遺構の請戸小学校等の施設が多数点在しています。福島県は、こうした経験から得た学びに基づき、持続可能な社会・地域づくりを探究する新しいスタディツアープログラム「ホープツーリズム」を提唱しています。

現在は復興過程にあることもあり、宿泊や研修、団体での食事に対応できる場所が限られており、来訪者の多くが短時間の滞在になってしまう課題がありました。ここにホテルが開業することで、地域への滞在を通じて得た学びや対話を深めるような滞在利用を実現したいと考えています。

 

――具体的に、想定する宿泊ニーズは。

練生川 観光を目的とした個人・ファミリー客のほか、企業研修や国際会議等の団体利用を想定しています。また、建設工事等のビジネス需要も見込んでいます。観光とビジネス、双方の需要を取り込みながら地域全体の滞在価値を高めたいと考えています。

 

――スパ・サウナ等のリトリート要素も取り入れている。

練生川 私たちは「復興」を支援すること以上に「未来に向けて新しい双葉町をつくる」一助になることを重視しています。

周囲に建物等が少ないということは、閑静で非日常の環境にあるということでもあり、日常から離れて自分を見つめ直すリトリートに適していると考えます。地元・福島の豊かな自然や食材を楽しみ、サウナや温浴施設で心身を整える。そうした滞在体験を通じて、新たな価値を感じていただければと思います。

 

――提供するサービスについては。

練生川 私たちも雇用創出の観点から、スタッフには浜通りや双葉郡にルーツを持つ人材を多く採用しました。地域の今と過去を知るスタッフと、この地域を訪れる旅行者が対話し、コミュニケーションを取ることで、地域への理解に繋げられればと考えています。

館内のレストランは、宿泊客だけでなく、地域に在住・勤務する方たちも利用できる場所にします。ライブラリー等の共用空間でも、こちらから積極的に関わる企画やサービスを提供し、この街らしさを感じられるホテルをつくりたいと思います。

 

(国際ホテル旅館2026年2月5日号から抜粋)