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経営者に聞く

25年超の豊富な経験を活かしたレベニューマネジメント 【 Clavis Partners】

25年超の豊富な経験を活かしたレベニューマネジメント 【 Clavis Partners】

レベニューマネジメントの概念を軸にしたホテル・旅館の販売戦略策定と収益の最大化・最適化を担うべく、昨年11月に設立されたClavis Partners(クラビスパートナーズ、東京都渋谷区)。約20年にわたってレベニューマネジメントの現場で活躍してきた経験を活かし、同社を立ち上げた代取締役の杉山康之氏に会社設立の狙いと、国内宿泊施設におけるレベニューマネジメントの現状と課題を聞いた。

 

――ホテル業界における25年間のキャリアでは、宿泊予約・Webマーケティング業務に長く従事してきた。

杉山 新卒から一貫して、ホテルと関連業界でキャリアを積んできました。

私にとって大きな転機だと自覚しているのが、スイスホテル南海大阪(大阪市中央区)での経験です。在職中に経営譲渡による運営体制の変更とリブランドがあり、レベニューマネジメントという概念を知るきっかけになりました。

その後、関西のエリア主力ホテルでレベニューマネジメントの経験を積み、レベニューマネージャーとして大手ホテルチェーンの本部やホテルの運営支援会社等で様々な経験を積みました。直近ではアセットマネジメント会社でホテルを担当し、国内ホテルチェーンの本部でセールス&マーケティング部門の立ち上げ等も手掛けました。

これまでは会社に所属していましたが、自分自身の経験をより幅広く活かせるステージとして、レベニューマネジメントを中心とするコンサルティング会社の立ち上げに挑戦することとしました。レベニューマネジメントの理論と実践、組織構築について、私のセオリーとスキルが必要とされるところがあるのでは、と考えています。

 

◆運営会社に求められる「アカウンタビリティ」◆

――レベニューマネジメントは、AIによる解析ツールやOTAのオプション機能等の登場で、より身近になっているのではないか。

杉山 そういったツール・機能が出てきて便利になったことは確かです。ただ、レベニューマネジメントは、それらのツールで得られる情報を集約し解析した「需要予測」が全てではなく、需要予測を踏まえていかに客室を販売していくかを考えて行動する「販売戦略の実践」も含まれます。

ホテル・旅館の運営会社の中で、この販売戦略を実践するための組織体制が十分に確立されていない、あるいは運用上の課題を解決したいというところに、私たちの事業機会があると考えています。

今、運営会社には、あらゆるステークホルダーに対する説明責任(アカウンタビリティ)が求められるようになっています。

料金を支払う立場の宿泊客に加えて、社内や親会社・株主、さらには土地・建物のオーナーやアセットマネジメント会社と、宿泊の事業と収支に関わる各方面の関係者が納得するかどうかを考慮し、説明してコンセンサスを取ることも、運営会社の重要な仕事になっています。たとえAIツールが推奨料金を弾き出しても、運営会社には、その根拠も含めて明確に説明する責任があるのです。

例えば今現在、人手不足の中で宿泊需要が急回復・高止まりしている局面では、予算達成の方法として、客室稼働率に上限を設定しながら収支が取れる宿泊料金を設定する、という運用も十分に選択肢の一つとなり得ます。もちろん、その逆に料金を抑えて客室をフル稼働させる、という選択肢もあるでしょう。絶対的な正解は無いと思うのです。

正解が無い代わりに、あらかじめより良いベターな選択肢は何か、何を重視するのかをステークホルダーと共有し、その上でレベニューマネジメントの目標を設定するということが大切になります。

――そういった視点に基づき、レベニューマネジメント業務のコンサルティングや受託、人材育成等を行う。

杉山 当面はコンサルティングや業務受託を中心に、担当者へのトレーニング等もサポートできればと思います。

レベニューマネージャーの育成は簡単ではありません。年間を通じた需要変動の傾向を掴みながら、予算および目標達成に対して様々なアクションを試みる、ということを何度も繰り返します。その間には予測できない需要の増減が発生することもありますし、その事態に対処することで、ようやく自分なりのセオリーやスキルが身につくものです。

――特定のシステムと組んだり、自社開発したりすることは考えていない。

杉山 現在のところ、自社でシステムを開発したり、特定のベンダーを組んだりといったことは考えていません。もちろん、クライアントであるホテル・旅館からの相談には乗りますし、ベンダーの皆さんと共同でプロジェクトを立ち上げることもありますが、クライアントであるホテル・旅館の課題や目指すゴール等に寄り添って応えていきたいです。

(国際ホテル旅館2024年10月5日号)