TOP INTERVIEW
経営者に聞く
国内旅行者が気軽に誘い合える宿を【大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ、湯快リゾート】
有名温泉地等に温泉旅館・ホテルを展開する大手チェーン同士がタッグを組んだ、今回のブランド統合。背景にあるのは日本人の〝旅行離れ〟に対する危機感だという。湯快リゾート代表取締役社長の西谷浩司氏と大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ代表取締役社長の橋本啓太氏に聞いた。
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――両社の出店戦略に関する考え方はブランド統合後も変わらないか。
西谷 既存の旅館・ホテルをリブランドおよびリニューアルする、という形態の出店展開を引き続き基本とする予定です。これまでの出店ペース等も踏まえ、今後3年間で10店舗の新規出店を進められればと考えています。
――湯快リゾートは西日本での展開を中心とし、従来関係の深かった伊東園ホテルズ(東京都豊島区)とは営業拠点を棲み分ける傾向があった。今回、大江戸温泉物語ホテルズ&グループとブランド統合をすることで、伊東園ホテルズとの競合性が高まるのでは。
西谷 現状、すでに大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツと伊東園ホテルズの両方が営業しているエリアがあり、今後も主要都市圏の近郊および有名温泉地等、私たちが決めた条件に沿って出店を進めるに際し、伊東園ホテルズと同じエリアに出店する可能性は十分あると思います。湯快リゾートと伊東園ホテルズとの関係は徐々に変化していますが、今も良い交流が続いています。
――運営体制についてはスケールメリットを活かした効率化とコスト最適化、サービスの品質向上を図るとあったが、開発機能についてはどうなるか。
橋本 もともと、両社とも社内に開発機能があり、それぞれが様々なネットワークを持ちながら新規出店計画を進めてきました。目下、この領域についても共同で進める体制が構築できつつあり、相互のネットワークを活かせることは大きなメリットになると思います。
これは開発だけに限った話ではなく、両社がこれまで培ってきた宿泊事業のナレッジやノウハウを同じテーブルに並べたことで、お互いの知恵や手法を相互に学び、新たな気づきを得ることもできました。今後、こうしたことの『良いとこどり』をして、より成長していければと思います。
西谷 国内の宿泊業界ではインバウンド需要を積極的に取り込む動きが活発ですが、私たちはあくまでも日本国内旅行者をメインターゲットに据え、日本中の旅行者が旅行に行きたい時に気軽に誘い合い、何度も温泉旅行を楽しんでもらうことを目指し、温泉旅行を手軽に楽しめるカジュアル温泉宿を展開してきました。出店エリアや規模等、諸条件を設けてはいますが、国内のカジュアル温泉旅行需要を掘り起こせるチャンスは全国各地にあると考えています。
カジュアル温泉宿の運営を行う上で、コストの効率化・最適化は重要な経営課題です。今回のブランド統合でスケールメリットが生まれることで、様々な値上げ圧力にも対応していきやすくなると考えています。また、大江戸温泉物語は複数のブランド・シリーズを展開しているため、同じエリアの中でも複数店舗を出店し、各施設の個性が出しやすくなることもメリットとして大きいと思います。
――両社がホテル・旅館の再生事業に乗り出してから20年ほどが経過した。宿泊事業の環境や事業再生に対する捉え方も変化しているのでは。
橋本 近年は当社でも私的整理による再生物件を扱う機会が増えています。経営破綻に伴う様々なリスクとオーナー・経営者が被るダメージを最小限に抑えながら、事業の譲渡・再生ができるという選択肢が示されつつあると感じています。
西谷 様々な宿泊事業を引き継いできた中で、オーナーや経営者の皆さんからは、既存のスタッフ・従業員の継続雇用や取引先との関係維持を望む声を受けたこともあり、その希望に応える取り組みについても実績を重ねてきました。リブランドによる一時閉館の際にも、近隣のグループ施設で受け入れる等、雇用をできるだけ途切れさせない取り組みも行っています。今回私たち2社がブランド統合することで、そういった取り組みもよりやりやすくなると期待しています。
(国際ホテル旅館2024年11月5日号)