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経営者に聞く

コロナ禍だからできることを実践 情報交換も活発に【日本ホテル】

コロナ禍だからできることを実践 情報交換も活発に【日本ホテル】

JR東日本ホテルズを展開する日本ホテル(東京都豊島区)。ホテルの利用機会が激減したコロナ禍の中、里見雅行社長は「私たちが運営するホテルを利用したいと考えて下さった方たちの期待に応えたい」という思いから営業を継続した。

この状況下で今だからできることを現場で実践しようと、特に社員・スタッフの新たな「学び」の機会にした。マルチタスクに対応するスキルを身につけられるよう、宴会部門のスタッフがレストランサービスにヘルプで入ったり、これまで外部企業に委託していたルームメイキング業務の一部を内製化したりした。特に後者は、最大30時間の滞在が可能なプラン「Me-Time 30」「Family-Time 30」など、従来の宿泊プランとはチェックアウト時間が異なる場合に効率的に対応できるようになった。

利用客の声や当社グループホテルの評価の把握にも努め、OTAの投稿コメントやSNSなどで呟かれているクチコミなども日々確認している中で、多くの気づきを得ることができたという。「館内の清潔や衛生管理に対しての関心が確実に高まっています。衛生管理の徹底と同時に、より丁寧にインスペクション(清掃客室の最終確認)を行うようにしています」(里見氏)。

クチコミの情報収集からは、ホテルでの過ごし方、ホテル滞在に求めるニーズの変化も感じたという。「ホテルの近くに住む人たちも、日常生活から離れ、安全で安心できる環境をホテルに求めているのかもしれない。最大30時間の滞在が可能な各プランは、こういった検討から企画されました」(里見氏)。

グループホテルが施設間の垣根を超えてプランを共同販売する動きも。里見氏は「コロナ禍以降、社内で情報交換の頻度はかなり上がっています。Web会議システムによって状況や事例を共有するスピードが速まり、議論の機会も増えています。例えば各ホテルの総支配人は、週1〜2回くらいのペースでこうした議論に参加しています」と語る。

ここでの議論や情報交換を経て、JR東日本ホテルズを横断したプランやキャンペーンが続々登場した。ホテルメトロポリタン(東京都豊島区)が開催して人気を博した参加型謎解き宿泊プラン「ミステリーホテル」を、今年は他のメトロポリタンホテルズにも展開、合計5施設で実施した。

Web会議システムやテイクアウトサービスなど、コロナ禍ならではの取り組みは、本業の利用機会を損なう可能性が無いか。里見氏は「そうばかりとは思いません」と即答する。

「逆に人が会うことの大切さも再認識されています。人間社会の基本は、皆が集い、人が直接触れ合うことにあると思います。これからも、ホテルが集いの場・交流の場を提供する役割を担い、引き続き社会において重要な産業に位置づけられると考えます」(里見氏)。

(写真: Me-Time30プラン)