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- 24.05.25
第4回 レベニューマネジメントシステムの定跡【令和の「レベニューマネジメント」新常識】
私はよく、レベニューマネジメントを将棋に喩えます。私自身、将棋にまつわる小説やコミックが大好きな「読み将」なこともあって比喩がしやすいのです。
将棋は120ほどの手数で決着がつくと言われます。これを宿泊予約のリードタイムに置き換え、120日前からどのような手を打つかを考えたりもします。
120日前というとインバウンドの入り込みが本格化する頃で、以降、予約状況は刻々と変化していきます。インバウンドは、契約するエージェントとその内容、海外OTAへの提供状況等によって、ある程度の方針が定まります。これを定跡=最善の指し手になぞらえるわけです。インバウンドも確かにレベニューマネジメントの対象ではありますが、具体的な施策を打つのはその後、定跡を外れてからになるでしょう。
定跡にも色々あります。棒銀のような速攻型、穴熊のような守り優先、矢倉のようなスタンダードなものなどです。インバウンドも同様で、エージェントによって客単価は高く宿泊日数が短いタイプもあれば、その逆もあります。人手不足の今なら泊数の長い方がありがたいですが、それが解消しつつあれば単価優先という判断もあるでしょう。
今後、中華系の団体客が増えれば定跡も大きく変わります。人数が大きい一方、政策上の理由で訪日旅行を取り止める等、不確実性もあります。2010年代、リードタイムによってはインバウンドのキャンセル率が50%を超えた時期もありました。一方、国内需要は全く別物です。一般的には60日ほど前から週末のファミリーや二人旅需要が動き出し、平日のビジネスユースは30日ほど前からようやく立ち上がります。
今の宿泊需要は「リードタイムの長いインバウンド」と「短い国内客」に分かれますが、その二つの需要に相関性はありません。インバウンドのターンが好調だからとそのまま強気で販売していても、国内需要は弱く、ほとんど売れずに終わってしまうことも珍しくありません。
確固たるデータがある話ではありませんが、インバウンドと国内需要は真逆の動きをするのかもしれません。インバウンドが強いと価格が高く設定されますが、国内需要は高い地域を回避する傾向にあるためです。
一例として2018年、インバウンドに注力していた地域におけるブッキングカーブを図に示しました。インバウンド需要が好調で価格が上がり、リードタイムも長くなったため早期に半分以上の予約が埋まりました。2017年と比較するとその時点でのオンハンドの差は歴然です。
一方、結果はどうでしょうか。2018年は前年と比べて直近の予約のカーブが著しく鈍化しています。これは、国内需要が思うほど入らなかったことを意味しています。最終的にインバウンドが少ない2017年の方が稼働率は高かったのです。
インバウンド比率が高かったことで2018年のRevPARは上昇しており、レベニューマネジメントが失敗したとは言い切れません。ただ、翌年の2019年になると客室の供給量が増えて価格競争が激化し、2018年以前の常識が通用しなくなった=定跡は破られました。
2024年の今、レベニューマネジメントの新しい定跡はどうなるのでしょうか?国際情勢は以前よりも不確実性が増しており、それが宿泊需要にどのような影響をもたらすか、そのヒントに歴史を振り返ることも重要ではないでしょうか。
小林武嗣氏(C&RM社長)
(国際ホテル旅館2024年5月5日号)
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