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  • 24.08.20

第10回 ホスピタリティサービスと保安【視点を増やして観光DXを加速】

第10回 ホスピタリティサービスと保安【視点を増やして観光DXを加速】

8月8日に発生した宮崎県日向灘沖を震源とする地震に伴い、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表され、さらに、例年とは異なる進路の台風が東日本から東北にかけて上陸する等、今年の夏の旅行シーズンは災害・防災について深く考えさせられる事態が相次いでいます。

この連載では、災害発生時に宿泊施設が担うべき役割について何度か伝えてきました。旅先で災害に遭った時、宿泊施設が避難所として機能することは非常に心強く、旅行者の安心・安全が保たれるでしょう。特に災害の多い地域では施設そのものがインフラとして整備される必要もあります。改めて、この役割を踏まえて、デジタル技術が進化する現代において、災害時にデジタル技術がどう関与するのかを一緒に考えましょう。

ホスピタリティサービスに従事する現場スタッフは、日頃から質の高いサービスを提供することを強く意識しています。フルサービスホテルでは手厚い接客マナーが身についていますし、リミテッドサービスのホテルでも日本ならではの丁寧な接客が心掛けられています。

これに加えて、さらに身につけて頂きたいのが「保安員」の役目を担うことです。もちろん、定期的な避難訓練等を実施していると思いますが、この訓練以外の教育機会があまり設けられていません。

例えば航空業界では、客室乗務員・キャビンアテンダントがドリンクや機内食を提供したり、乗客の様々なリクエストに応えたりして、平時はホスピタリティサービスの提供者としての役割を担っています。一方で、運航中にトラブルが発生すると保安員としての役割を担い、乗客の安全確保と命を守る行動を促し、厳格に誘導することになります。

 

このような考え方と、それに基づいた教育を、宿泊業界においても積極的に行うべきだと私は考えます。ホテル・旅館の現場スタッフも、平時は接客サービスを行いながら、有事の際には利用客の安全・安心を守るための行動を取るべきです。

ここにデジタル技術を取り入れると、災害時の様々なリスクを抑えることもできます。例えば、生体認証やセンサーは、シームレスなホテルライフの実現に繋がるとして注目されていますが、利用客の在不在や各種データを確認できることから、客室に誰かいるのか・いないのか、どのエリアに滞留しているのか、等を可視化でき、防災や救助活動に役立てて被害を小さくすることもできるのです。

サービスもデジタル技術も平時の役割ばかりが注目されますが、その機能を深掘りし、災害をはじめとする有事における価値にもぜひ目を向けて頂きたいです。日本の防災に関する意識や技術は、世界でトップクラスのものだと自負しています。その意識や技術を取り入れたホテル経営や関連産業は唯一無二のものとして、世界を圧巻するグローバルホテルチェーンに負けない力を持つと確信しています。

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

(国際ホテル旅館2024年8月20日号)