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  • 24.09.05

第8回 レベニューマネジメントのリカバリー③【令和の「レベニューマネジメント」新常識】

第8回 レベニューマネジメントのリカバリー③【令和の「レベニューマネジメント」新常識】

施設や地域により差異はあるとは思いますが、今年の夏の需要はかなり起き上がりが早く、好調だった施設が多かったように見受けられます。ただ、9月以降の需要に関しては苦戦している可能性が大きいと見ています。

少なくともコロナ禍前は、インバウンド需要が最も落ちるのが9月でした。これを踏まえると、今年もインバウンドの入り込みが弱いかもしれません。インバウンドの入り込みが弱いと早い段階での予約数が減少します。そのため、需要予測が「弱い」と出るのです。

リードタイムが短い国内客の予約がこれから動き出す可能性がありますが、需要予測が悪いと不安になり、価格を下げる圧力にもなります。マーケットデータから価格を予測するAIシステムもその状況に引っ張られ、結果的に市場全体が安く販売するよう誘導されてしまいます。

本来は前年の実績データなどからシーズナリティを予測するべきですが、直近の数年はコロナ禍とそれに伴う需要喚起政策の影響もあって正常値とは言えません。まずは基本に立ち返って、一般的な需要予測の方法を理解することが重要です。

需要予測というのは統計的な手法で行われます。これをAIに任せると計算の意図が分からないため、出てきた数字をそのまま飲み込むしかありませんが、統計的な手法を知っていれば別の観点から数字を見ることができます。

第一に見るべきは「セグメント=分類」です。インバウンドと国内客、さらに国内客も遠方客と近距離客、そして人数別などとグループ分けをします。そして、グループごとの平均的なリードタイムを調べます。

インバウンドは遠方のため、リードタイムは長い傾向にあります。また、二人客よりも一人客の方がリードタイムが短い傾向にあります。これを示したのが図のブッキングカーブです。

例えば、客室数150室の部屋のホテルで直近3カ月の需要がとても良かったとします。3カ月の平均で60日前の予約が100室入っていたとして、そこから60日間で50室売れれば満室になるというブッキングカーブを算出します。

これが、仮にある日の予約が60日前の時点で80室分だと、ブッキングカーブ通りに予約が入ると当日は130室が稼働すると予測されます。果たして本当にそうなるでしょうか。

ここで改めて図を見てほしいのですが、このブッキングカーブは後半が鈍化しているように見えます。私の意見として、これは「販売する部屋が無くなったので予約が『取れなかった』期間」、つまりロストビジネスをしたと考えます。

ホテルは販売可能な客室数のキャパシティが決まっています。満室以上を売れないからこそレベニューマネジメントの必要性があるわけで、このブッキングカーブを見る限り、実際の需要はもっとあるかもしれません。

宿泊費の直近1カ月前から2週間の間に少しずつ曲線が鈍化していく理由として、価格のアップも考えられます。需要を踏まえて価格を高くしたのであれば、「価格を据え置けば売れるかもしれない」とも考えられます。

このような仮説を立てると、本当の需要が見えてくるはずです。

小林武嗣氏(C&RM社長)

(国際ホテル旅館2024年9月5日号)

 

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