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  • 旅行会社、OTA
  • 25.07.08

海外OTAによる転売問題 波紋広がる

大手ホテルチェーンも旅行者に注意喚起

 

一部の海外本拠のオンライン宿泊予約サイト(海外OTA)を巡り、宿泊予約に関するトラブルが起きているとして、国内の宿泊業界から不満の声があがっている。

東横イン(東京都大田区)は6月16日、同社が提携サイトに提供している空室枠の一部がAgoda等の海外予約サイトに転売され、同社が予約情報を受け取れなかったり、客室タイプや日付が異なる予約情報が通知されたり等の事象が発生していると発表した。

24日には星野リゾート(長野県北佐久郡)代表の星野佳路氏がX(旧Twitter)に投稿し、Agodaと直接契約していないにもかかわらず、同サイトから予約をしたという旅行者が星野リゾートの運営施設を訪れ、部屋が確保されていないケースが頻発していると発信した。

 

本紙の取材でも、首都圏や近畿圏のホテルを中心に、一部の海外OTA経由の予約について「予約者と来館者の名前が違う」「予約情報が異なる(料金・プラン、部屋タイプ等)」「予約が入っていないのに来館した」「決済をした・しないで認識の相違があった」等の声が相次いだ。

あるホテルでは、大手旅行会社の早割りプランに参画したところ、そのプランが海外OTAに転売され、早割り期間終了後も同プランの料金による販売が続いていたという。ホテルは転売されていた海外OTAと直接契約をしておらず、客室が売れるまでその動きを把握していなかった。

宿泊施設が主体的に料金を設定し客室販売をコントロールするレベニューマネジメントが推奨されているが、旅行会社・OTA間の情報連携が以前よりも進んだことで、その管理が難しくなっている。

旅行会社・OTA間の連携は、販路拡大と選択肢の増加といった面で、宿と旅行者の双方にメリットがある。一方で、旅行者がより安く・お得に宿泊したいと考えるのも当然であり、需給に応じた料金設定を目指す宿とは、しばしば利益相反の関係も生じてしまう。

宿にしてみれば、こうした事情を踏まえつつ適正な料金を設定しようとレベニューマネジメントに取り組んでいるが、特定の旅行会社または条件を満たす旅行者のために用意したお得なプランが、転売等によって本来想定していない旅行者や旅行会社に流通してしまうことにやるせなさを感じるだろう。

専任チームがいる大手ホテルチェーンですらこうした動きに頭を痛めているのに、専任の人材を確保することが難しい独立経営のホテル・旅館にとっては、より厄介で深刻な課題である。

旅行会社・OTAにおいては、宿泊施設との信頼関係も尊重し、適切な取引を維持する姿勢が求められる。

 

(国際ホテル旅館2025年7月5日号から抜粋)