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- 本紙好評連載
- 25.08.21
第21回 テクノロジーによるホテルの安全・安心(センサー編)【視点を増やして観光DXを加速】
耐震と同様の防災基準を
ホテルDXの推進には様々な可能性がありますが、「安全・安心」に軸を置いた技術の普及は、まだ十分に普及しているとは言えません。一方で、気候変動による局地的豪雨や台風、地震・津波などの自然災害は、いつ発生してもおかしくない状況です。滞在中の宿泊客の安全を守ることはホテル事業者の責務であり、最優先事項でもありますが、決して容易ではありません。
私は、耐震基準などと同様に、減災・防災技術を公的ルールに基づいて整備すべきだと考えます。
一般住宅の分野では、大手ハウスメーカーの主導でセキュリティシステムと緊急通報の連動が進んでいますが、ホテル客室には、これと同様の仕組みがほとんど装備されていません。
天井埋め込み型のセンサーでエリア内の人数を把握する技術は、当ホスピタリティサービス工学研究所でも実証されています。ホテルPMSと連動し、センサーを適切に配置すれば、特定の空間における状態が記録され、万が一のトラブルが発生した際にも迅速な対応に繋がります。
センサーで状況を把握
このように、技術的には一定の成熟段階にあるにもかかわらず、ホテルにおけるセンサー技術の普及のスピードは、開発企業の営業努力に依存しており、市場への浸透は限定的です。これを変えるには、安全基準の一環として制度化し、防災システムに組み込むことが有効でしょう。制度面での裏付けがあれば、導入の優先度は高まります。
これからの宿泊運営では「利用者情報(PMS)・建物設備・エネルギー」の管理が一体化したスマートビルディングの導入が有効になるでしょう。従来のホテル運営は、宿泊やレストランなど、既存サービスの管理で十分とされてきましたが、今後は多様なケースを想定した事業運営の再構築が必要になります。
少人数運営に向けた体制を
新技術の導入には初期投資が伴います。しかし長期的には、被害の軽減や業務効率化によるコスト削減効果が期待でき、トータルで見ればバランスは是正されると考えます。特にセンサー技術は、在室状況の把握にとどまらず、睡眠状態、室温、湿度、人の動きなど、より高度なデータを収集できます。
これらの情報は有事対応だけでなく、FFE(家具・調度品・設備)更新や客室改装の判断材料にもなります。客室稼働率や利用傾向の把握は、無駄のない投資計画や持続可能なホテル経営の実現に直結します。
観光 DX を推進するうえで、派手なサービスや最新ガジェットに注目が集まりがちですが、真の価値は“見えない安心”を支える基盤技術にも存在します。
藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)
(国際ホテル旅館2025年8月20日号)
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