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  • 25.10.21

第23回 環境配慮や脱炭素が求められると観光産業はどうなるか【視点を増やして観光DXを加速】

今年の夏は記録的な猛暑が続き、地球温暖化や環境問題について改めて考えさせられる機会となりました。

たとえ環境に負荷をかけるとしても、私たちは経済活動を続け、日々の暮らしを営まなければなりません。私も暑さに負けず各地に出張していましたが、その中で「CO₂削減」「エコ」を掲げたホテルの宿泊プランを目にしました。

それらの内容を確認すると、連泊時の清掃を簡略化し、タオル交換やごみの回収をする程度にとどめるとの案内が少なくありません。確かに作業工程を減らすことでエネルギー消費量や労力の軽減に繋がり、脱炭素に貢献していると言えるのかもしれません。しかし、それは環境に配慮していても「ホスピタリティ」と両立していると言えるのでしょうか。

 

まず、そもそもの話として、客室が清潔な状態に保たれていることは、宿泊客にとっては基本中の基本のことではないでしょうか。連泊客だからといって簡易清掃が続くと、チェックアウト後に通常清掃をしたとしても、その次に利用する宿泊客にとって清潔で快適な状態かどうか、疑問が残ります。ゴミやチリ・ホコリの除去だけでなく、ニオイや空気の入れ替えにも気を配らなければなりません。客室を使う宿泊客が入れ替わるのは当然ですが、インバウンド需要も含めて宿泊客の多様化が進む今だからこそ、衛生管理の徹底が求められます。

観光産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する立場からすれば、きめ細かなおもてなしの品質を価値とする「ジャパンクオリティ」を見直す好機でもあると考えます。脱炭素社会の実現に向けてホテルや旅館ができることは、施設側が主体的に環境に配慮した活動を行うだけでなく、宿泊客自身も環境配慮に参加できる仕組みづくりも重要だと考えます。

 

当社の沖縄の研究開発拠点「タップホスピタリティラボ沖縄」では、利用者が能動的に環境配慮に関わる仕組みの研究をしています。まず、エネルギー消費の傾向をデータ化し、次に一般的な消費量を解析して基準値を設定します。そのデータをもとにした機能をホテル管理に組み込むことで、エネルギーマネジメントの精度が高まります。基準値に対する増減を把握できれば、環境に配慮した様々なプラン・サービスを展開することもでき、冒頭に触れた「CO₂削減」「エコ」を具現化できます。

日本の観光地は、都市部から自然豊かな地方まで多様なエリアがありますが、どのエリアにおいても、大気汚染の改善、水質保全、自然との共存等、取り組むべき課題は共通しています。これらを共通の社会課題として認識し、取り組みを平準化することで、日本の観光品質はさらに向上するでしょう。今後、観光産業が直面する課題はますます複雑化すると思いますが、多角的な視点とDXの力で解決の糸口を見出すことが求められています。

 

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

(国際ホテル旅館2025年10月20日号)