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  • 26.01.20

第26回 2026年・注目すべき観光DXの思考と創造【視点を増やして観光DXを加速】

新年の幕が開きました。観光産業や宿泊業界が抱える課題と、そこに息づく本来の魅力。いずれも観光DXによって、新たな形で結び直すことができます。まだ知られていない価値を光のもとへ導くため、私は今年も観光DXの意義と未来を多くの人々に届けたいと考えています。

 

産業界では、AIとの関係性を強く意識した潮流が加速しています。宿泊業界もまた、AI活用を前提とした時代に突入したと言えるでしょう。

例えば、パーソナライズされた宿泊体験では、宿泊前に温度や照明などを自動調整することが可能です。さらに、行動データに基づく客室アップグレードの提案、追加サービスのレコメンド、多言語対応なども代表的な活用例です。

ある報道によれば、グローバルホテルチェーンのヒルトンはこれらの技術を「Hilton Connected Room」として導入した結果、ゲスト満足度が2割ほど向上したそうです(https://mediaboom.com/news/ai-in-hotel-industry/)。

 

事業者は、コアとなるデータを活用することで宿泊客の快適性を実現しています。しかし、コアデータは「エッジ」と呼ばれる現場で得られる情報がなければ蓄積されません。私が今年、注目していることの一つはエッジの重要性を改めて見直すことです。

エッジとコアの関係性は、経済活動における大都市圏と地方の関係に置き換えると理解しやすくなります。都市部や中央機関等のコアと地方観光地のエッジは、AI分野で語られる中央の大規模モデル=コア AIと現場で即応するエッジ AIの役割分担に非常によく似ています。

コアは観光プロモーションやインバウンド戦略の立案、OTAやSNSを活用したデジタルマーケティング、広域データの統合等、全体の方向性を示す高度で集中的な役割を担います。一方、宿泊・飲食・体験サービスといった価値が実際に提供される現場=エッジでは、観光客の行動データがリアルタイムで発生し、臨機応変な対応が求められます。

 

この構造を AIの働き方に重ねると、さらに理解が深まります。大量の情報を統合し戦略を生み出すコア AIがクラウドで機能し、観光地の個別状況や瞬間的な変化に対応するエッジ AIが現場で稼働する、という補完関係が成り立ちます。コアが生成するマーケティングモデルを背景に、現場では混雑予測や人流解析、スマートチェックインといった現場 AIがリアルタイムで稼働することで、旅行者の体験価値を最適化するのです。

観光経済におけるコアとエッジが「相互依存のエコシステム」として機能し、創造を重ねることで、現場発のイノベーションは無限に生み出されます。そしてそれは、エッジで生まれた重要なデータがコアと好循環を生み、持続可能な観光立国・日本の価値創造へとつながっていくはずです。

 

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

(国際ホテル旅館2026年1月20日号)