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- 24.11.05
第10回 旅館のレベニューマネジメント【令和の「レベニューマネジメント」新常識】
宿泊業界では、レベニューマネジメントに対して「価格の上下」と捉えている人が少なくありません。そのため、馴染みの顧客に支えられて営業してきた旅館では、特に忌避感が強いようです。
私は今、山梨県の宿泊施設DX強化推進事業に参画し、県内旅館のレベニューマネジメントをサポートしています。この取り組みでは、通年で10%の売上アップを目標にしています。宿泊事業において売上の10%アップは非常にインパクトが大きく、キャッシュフローが厳しい宿には嬉しいものでしょう。
ただ、レベニューマネジメントの運用に際して専任スタッフを付けたり、大幅な時間を取られたりしては、ただでさえ人手不足な現場をさらに混乱させてしまいかねません。
下の図に示したのは「限界効用逓減曲線」というものです。経済学のあらゆる現象に適用できる法則の一つで、簡単に言うと「少し費用をかけると高い効果が得られるが、その効果を100%に近づけようとすればするほど、限りなく莫大な費用がかかる」というものです。
例えば、業務の管理に台帳を使っていた旅館がパソコンソフトに切り替えれば相当の業務効率化が期待できます。しかし、その効率化の品質を金融機関並に高めようとすれば莫大な費用が発生します。また、例えば現時点で70%程度の品質を80%に高めることには大したお金がかからないのに、99.3%を99.5%に高めようとすると数億円かかる、というケースもあります。
金融機関なら損害の規模が大きいので、わずかであっても品質向上の投資をしなければならないでしょう。しかし、旅館がそれを求めても意味がありません。中小資本の旅館が目指すべきは、コストと効果を天秤にかけながら最もバランスの取れたポイントを取ることです。
レベニューマネジメントも同様で、中小規模の宿泊事業者が専任者を雇ったり、特定の誰かに作業を依存したりするのはナンセンスです。
そこで「需要を取れる日はきちんと取る」「取れない日はそのまま」と、現在の運用に少しだけ労力を加えるだけにして十分な果実を取る。その果実の目安が「通年で10%の単価アップ」という戦略です。
私がお勧めするレベニューマネジメントは、1日に15分から20分程度で完了する、非常に簡単なオペレーションです。
大手のホテルチェーンであれば、数名の専任スタッフが詳細なデータを確認しながら90日先の予約状況を日々調整しています。一般的な成功事例として言われているのも大手ホテルチェーンの手法が多いのですが、彼らは数1000室・数万室を一度に運用していて、1日に数1000万円をロスすることもあります。限界効用逓減曲線で言えば、まさに効果を100%に近づけるための手法であって、それが「正しい」とされても、旅館や独立系ホテルには全く共感できないものです。
旅館は旅館ならではのやり方をしなければなりませんが、逆に、大手ホテルチェーンほどの緻密さは必要ありません。コストや手間を最小限に抑えながら、売上アップした分が消費税分を除き純利益にすることができるので、ぜひ挑戦してほしいと思います。
小林武嗣氏(C&RM社長)
(国際ホテル旅館2024年10月5日号)
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