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  • 25.07.23

第20回 政策から社会に実装されるDXの流れ【視点を増やして観光DXを加速】

観光産業のDXを加速させるためには、まず適切な政策を講じることが必要ですが、政策が策定されただけでは意味がありません。政策に基づいた支援事業が立ち上がり、その事業が遂行されて社会に実装されなければ意味がありません。

さらに言えば、観光政策の背景を読み解きつつ、それを念頭に置いた事業を遂行することがDX推進の近道にもなります。

「人手不足」という課題が現れると、多くの人がその解決策として「DX」を口にしますが、これは今に始まったことではありません。この根底には、2016年に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」で提唱された日本の科学技術政策「Society 5.0」があります。

Society 5.0は「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」として、我が国が目指すべき未来社会の姿と定義されています。

私が責任者として企画した「変なホテル」は2017年に1号店が開業しましたが、このような政策を踏まえて確信を持って実行に移したもので、決して無計画に進めたものではありません。現在、各分野におけるDX支援制度もこの基本方針と矛盾せず整備されています。

もちろん、2016年に提唱された内容が2025年の今もそのまま有効とは限りません。政策は定期的に世界の動向を調査しながら、適宜見直されています。

例えば、2021年は新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、ITプラットフォーマーによる情報の独占や富の偏在といった問題が指摘され、政策の再評価が行われました。その結果、政府による投資方針や官民の研究開発投資の総額などが明示され、国を挙げてDX推進の土台が整えられました。

こうした研究開発投資は、システムを開発するIT企業のみならず、それを提供される各事業者や個人もDX加速の環境が整い、シームレスなデジタル社会を享受しています。

ホテルにおけるロボット活用やアプリによるチェックイン・チェックアウト等のデジタルサービスは、「人手不足だから」という理由だけで導入するのではなく、すでにデジタルな日常に慣れ親しんだ人々にとって自然な流れとして実装すべきものです。高度な生体認証システムなど、大掛かりなプロジェクトを初めから導入する必要はなく、小さくても着実な一歩を踏み出すことが大切です。

現在、多くの政策に基づいた支援事業が公募されています。こうした支援を上手く活用しながら、ホテルDXを社会に定着させ、デジタルサービスを拡充していくことが、今まさに取り組むべき最優先事項だといえるでしょう。

 

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

(国際ホテル旅館2025年7月20日号)