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経営者に聞く

ホテル市場は様々な危機を克服してきた【JLL】

ホテル市場は様々な危機を克服してきた【JLL】

――御社が行った調査によれば、コロナ禍においても投資家の不動産市場に対する投資意欲は衰えていないとの結果が出た(※)。ホテルに対しても同様か。
辻川 一部の短期志向の投資家の中にはホテル投資を一旦見合わせる動きもあるが、中長期的な保有を志向する投資家はいずれ需要が回復することを見越して投資スタンスを変えていない。
世界のホテル市場は、これまでもSARSやリーマンショックなど、需要を大きく損なう事態に何度も直面してきた。日本国内に限れば東日本大震災もあった。でもその度に危機を克服し、さらなる成長を遂げてきた。長期志向の投資家はそういった歴史を見て、評価している。
――海外投資家の評価も変わらないか。
辻川 日本市場から撤退する動きは、今のところない。そもそも日本への不動産投資は、政情や社会の安定性などがポジティブに評価されている。
ホテルに関しては国内旅行者の層の厚さが改めて見直されている。インバウンドは取り込みにくい状況だが、国内旅行が建て直しの原動力になるとみている。
――賃料の工面に窮する運営会社も多い。ホテルの賃貸借契約において、今回のような事態への対応はどのように取り決めているのか。
辻川 一般的に、契約には「不可抗力条項」が盛り込まれている。戦争やテロ、自然災害などによって契約の取り決めを履行できなくなった場合に、それを免除・免責できるというものだ。
この「不可抗力」が何を指すのかについては難しい問題で、当事者によって解釈が異なる可能性がある。今回の新型コロナウイルス感染症についても、例えば、ロックダウンのように人の移動が強制的に制限されれば不可抗力と言えるかもしれないが、日本のように外出自粛要請の中で需要が減った状況が不可抗力なのかどうかは、微妙な話になってくる。
――実際に賃料交渉の話も起きている。
辻川 将来賃料交渉が妥結されなかった事態を想定した相談は来ている。恐らく、現在は相対による交渉が引き続き進んでいるのではないかと思う。
日々刻々と状況が変わる中で、オーナーも運営会社も難しい対応を迫られている。未曾有の難局を乗り超えなければならない状況にあることは、双方同じ。当社としても適切な投資と事業の継続に向けた支援を引き続き行っていきたい。

※…JLL、新型コロナウイルスによる不動産市場への影響について投資家調査を実施。75%の投資家が今後も積極的に不動産へ投資する考え(5/26発表)