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経営者に聞く

写真が幸せに働ける職場づくり【関屋リゾート】

写真が幸せに働ける職場づくり【関屋リゾート】

別府温泉で旅館を経営する関屋リゾート(大分県別府市)が、ホテルや旅館を対象にしたコンサルティング事業を本格始動する。同社のスタッフ育成制度は、昨年2月に行われた第5回旅館甲子園(全旅連青年部主催)でグランプリを受賞。GPTWジャパンの「働きがいのある会社ランキング」にも選出されるなど、高い評価を受けている。

代表取締役CEOの林太一郎氏「私自身、経営において「人」を巡る苦労をしてきました」と振り返る。

「曽祖父の代から別府温泉で旅館を営んでおり、典型的な家族経営の宿。私は大学卒業後にサラリーマンを経て家業に入りました。2005年にデザイナーズ旅館の「別邸はる樹」、2015年には1「テラス御堂原」、2020年12月にアートホテル「GALLERIA MIDOBARU(ガレリア御堂原)」を開業しましたが、この間、スタッフが一斉に離職したことを2回経験しています」(林氏)。

スタッフとの間に明確なトラブルもなく、普通に経営をしていたが、それでも上手くいかなかったため、当時は原因が分からないままマネジメントや経営の勉強を始めた過程で気づいたことがあったという。

「宿泊業の経営には、片方では資金を借り入れて建物を建てる・改装するという側面と、もう一つ、現場運営を担う社員・スタッフを組織するという側面があります。この後者の側面にきちんと向き合わなければならない、そのためにも社員の幸せを考えなければならない、ということを痛感しました」(林氏)。給与や休日などの待遇を整備するだけではなく、「働き甲斐」や「自己実現」といった、お金以外の報酬を会社から受け取れる仕組みが必要だということに気がついたことが、全ての出発点だった。

社員を対象にした様々な研修の充実を図り、上職へのチャレンジ制度、月1回の面談など、様々な取り組みを実施。現在は離職率が劇的に少なくなった。何より林氏自身が現場業務をスタッフに任せることができ、経営者として新しい挑戦に取り組めるようになった。その一例が新卒採用で、現在は3期目になる。

「コロナの影響もあって、宿泊業界は無人運営や人を介さないおもてなしといった風潮に寄っています。ただ、そもそも何のためにホテルや旅館を運営するのか、企業を経営するのか、という本質的な視点に立った議論がなされていないように思います。無人化を突き詰めても、企業の持続的な成長に繋がるとは思えません」(林氏)。