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社員の「カイゼン」提案 2億円超の売上効果【ベッセルホテル開発】

社員の「カイゼン」提案 2億円超の売上効果【ベッセルホテル開発】

ベッセルホテル開発(広島県福山市)は、2021年度は宿泊単価が前期比10%以上、客室稼働率も10ポイント以上上昇するなど、業績に底打ちの兆しが見えた。代表取締役社長の瀬尾吉郎氏は「社員やスタッフ、取引先やオーナーの皆さんに助けられた。取引先やオーナーには当社のさらなるコスト削減策に骨を折ってもらったばかりでなく、宿泊客の紹介や宿泊前売り券の購入などにも力を貸してもらいました」と振り返る。

事業立て直しの大きな原動力となったのが、社員・スタッフの発案による「カイゼン活動」だ。客室以外の空間を活用した様々なアイデアを、各ホテルで実践している。
「駐車場が併設されているホテルでは、コインパーキングの管理会社やキッチンカーにスペースを貸し出したり、大浴場が設けられているホテルでは、保健所の許可を取った上で日帰り客を受け入れたりしています。厨房があるホテルでは『Ghost Kitchens』とフランチャイズ契約を結び、デリバリー・テイクアウトサービスを行うなどしています」(瀬尾氏)。

同社は2004年から、社員が月に1回「カイゼンシート」を本部に提出するという「カイゼン活動」を行っている。カイゼンシートは、売上の増加やコスト削減・業務効率化、顧客満足度の向上のいずれかに繋がるアイデアを書いてもらい、提出された全てのアイデアを「カイゼン委員長」をはじめ、社長を含む本社役員やマネジメント層が共有する。
「2021年4月から9月の上半期に提出されたカイゼンシートは合計3371件。提出されたアイデアを実践した結果、現在、社全体で2億6000万円の売上と7400万円分のコスト削減に繋がりました。私も毎月、全てのカイゼンシートに目を通していますが、現場ならではの本質を突いたアイデアが多く、まさに宝の山。今後も継続し、何より社員・スタッフのモチベーションアップに繋がることを期待しています」と瀬尾氏。

「底打ちの兆しが見えたとはいえ、楽観視はしていません。宿泊需要はコロナ禍前の水準には戻らないだろう、という覚悟を持っています。新規出店についても、2020年以前に始動していたプロジェクトは着々と計画を進めていますが、それ以降は慎重に判断しています」(瀬尾氏)。