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古い建物を長く生かす「再生建築」 ホテルでも実績【再生建築研究所】

古い建物を長く生かす「再生建築」 ホテルでも実績【再生建築研究所】

建物を「壊す文化から残す文化へ」―――。「再生建築」という新たな建築手法を通じて、社会課題の解決とサステナブルな社会の仕組みづくりに取り組んでいるのが再生建築研究所(東京都渋谷区)だ。築年数が古いという理由で廃墟・撤去されてしまう建築物の寿命を伸ばし、継承することに挑戦している。

同社の理念や技術を象徴するのが、同社がオフィスを構える東京・表参道の「ミナガワビレッジ」だ。検査済証の無い築60年の木造建物を含む4棟について、現行法規に適合する改修・補強工事等を行ったもので、昨年秋にはグッドデザイン賞2021ベスト100に選出された。

昨年12月には、大分県別府市で再生建築の手法を用いたホテル改修を実施。近隣の商店街店舗の改修工事も連動して行い、地域活性化が期待できる事業提案を行うなど、建築設計の枠組みを超えた再生も手掛けている。

再生建築は、老朽化した建物について、法的基準をクリアした上で安全性・デザイン性・収益性を追求した改修を施す手法。健全な状態の建物躯体を活かしつつ、自由度の高いデザインや設計を施すことで、不動産としての価値や収益性の向上を図ることができる。新築建物の建築に比べてコストが60%から70%程度に抑えられるほか、CO2や産業廃棄物の削減にも繋がるメリットがある。

同社代表取締役CEOの神本豊秋氏は、2012年に事務所を設立、2015年に法人化して再生建築研究所を設立した。既存建物の確認済証・検査済証の取得、および現行法のもとでは不適合の建築物を適法化するための工事施工、さらには環境性能の強化や都市再生や地域の潜在価値等の研究調査、建築物の管理・運営も手掛ける。

築年数が古くても躯体自体は健全な状態の建物が、検査済証が無いために既存ストック活用の障壁になっている建物の流通・流動化を促す。「法令改正や時代の変遷に伴うニーズの変化に適合していなくても、健全な状態の建物に適切な補強や改修を施し『長く活かされる建物』にします」(神本氏)。