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経営者に聞く

温泉旅館事業ATONA(あとな)立ち上げ【日本ハイアット】

温泉旅館事業ATONA(あとな)立ち上げ【日本ハイアット】

ハイアットと日本市場の関わりは50年を超える。

日本ハイアット(東京都千代田区)代表取締役の坂村正彦氏は「1970年に日本にセールスオフィスを開設し、1980年に国内1号店のホテルセンチュリーハイアット(現ハイアットリージェンシー東京、東京都新宿区)を開業。以来、時代の変化に応じた開発・出店を進め、近年は訪日外国人旅行者を含む観光ニーズに対応すべく、観光地やリゾートエリアへの新規出店も行っている」と語る。

今後も日本においては現行ブランドの出店計画を進める一方、この日本ならではの文化資源や精神性のようなものを体験できる滞在型レジャーとして、国内外のグローバル・トラベラーをターゲットとした温泉旅館事業を始動。昨年7月にKiraku(京都市東山区)との合弁会社であるAtona(あとな)を設立した。

坂村氏は「先行事例でインドネシア・バリ島で誕生したリゾートブランドのAlila(アリラ)がある。滞在を通じてその地域の土地や生活を理解・体験できるような、宿そのものがデスティネーションになるような滞在体験を提供し、素晴らしいロケーションとディテールにこだわり抜いたフルサービスのラグジュアリーブランドで、昨年9月現在、世界に16ホテル・1765室を展開する」と語る。

「ハイアットは『growth with intention』、意図を持った開発や成長として、出店地においてホテル事業を行う意味・意義から、そのホテルならではのユニークな滞在体験ができるストーリーづくりを重視してきた。旅館は、まさに日本ならではの高品質な滞在体験を提供するが、そのことが特に外国人旅行者にはあまり知られていない。ここにハイアットの顧客戦略との親和性があると判断した」と坂村氏。

後継者を含む担い手の不足や効率性の低い旅館の事業構造は、サステナブルとは言えないと坂村氏。「こういった側面が旅館の価値創出に繋がっている面もあるが、持続的な事業としていくためには、こうした課題にも向き合わなければならない」として、旅館ならではの滞在体験を提供できるような体制を整えつつ、国内外の旅行者が安心して滞在できるブランドに育てたいとしている。