TOP INTERVIEW

経営者に聞く

現場から100通の提案【三井不動産ホテルマネジメント】

現場から100通の提案【三井不動産ホテルマネジメント】

三井不動産ホテルマネジメント(東京都中央区)代表取締役社長の雀部優氏は、2021年は「新たな顧客層の開拓」と「リピーターの創出・獲得」に力を注いだ。
「当社をはじめ宿泊主体型ホテルの利用客の多くは、ホテルをビジネス旅行や観光・レジャーなどの拠点としていました。これを『ホテルを訪れる』『ホテルで過ごす』ことを目的とした利用機会の創出に向けて、様々なプランやサービス、キャンペーンを展開しています」(雀部氏)

従来の宿泊滞在とは異なる、ホテルで「働く」「住まう」「憩う/遊ぶ」といった過ごし方を提案。三井不動産グループが展開する法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」に同社運営ホテル全施設が提携。客室をプライベートな個室ワークスペースとして提供した。また、ホテルを生活の拠点とすることを提案するサブスクリプションサービス「サブ住む」の提供も開始。2種類の月額定額プランを用意した。

「サブ住むの利用者を追跡すると、全国各地の施設に滞在する「移住スタイル」の方や、都内で平日は三井ガーデンホテル五反田(東京都品川区)で、週末は三井ガーデンホテル銀座プレミア(東京都中央区)や三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロス(東京都江東区)で過ごすという方などもいました」(雀部氏)

リピーター施策については、昨年4月1日に新会員制度「MGHリワーズクラブ」を始動した。会員数は4月の時点で約45万人だったが、11月現在で約55万人に増えている。利用実績に応じてランクアップするステージも用意するなど、優良顧客ほどメリットが大きい制度とした。

「熱心なファン作りのために、制度を設けるだけでは不十分。より具体的に実践できることを企画するために現場スタッフの声を聞きたいと、9月中旬に若手社員を対象にアイデアを募集。私に直接メッセージを送ってほしいと呼び掛けたところ、約100通の提案が返ってきました。例えば、ロビーにコーヒーマシンを置くことで、宿泊客にコーヒーを提供しながら良い香りを楽しんでもらうこともできる、といったものや、接客サービスの工夫、SNSの運用など、多岐にわたるアイデアが寄せられました。中には、大学でマーケティングを学んだ社員がデータ分析をもとに提案してくれた本格的な内容も。若い世代のホテル選びの考え方や方法等が分かる機会にもなりました」(雀部氏)。

雀部氏は全てに目を通し、真剣にホテルのことを考えているという熱意が伝わったという。一人ひとりに直接メールを返信しているところだった。
「私が社長に就任したのは2020年4月。今に至るまでマスク越しでしか対話できていませんが、現場とのコミュニケーションを緊密に取ることの大切さを再認識しています」(雀部氏)。