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  • 26.04.22

CES2026レポート③宿泊施設は「エネルギーの拠点」へ進化する【視点を増やして観光DXを加速】

米国ラスベガスで1月に開催された世界最大級のテクノロジー見本市・CES2026では、AIやロボティクスと並び、エネルギー分野の存在感も際立っていました。宿泊施設を含む観光産業のあり方そのものが変化しつつあることを強く印象づけるものでした。

従来の宿泊施設は、電力や燃料を外部供給に依存する「エネルギー消費の場」として設計されていました。しかし、今回のCES では、水素燃料電池や次世代固体電池、太陽光発電、高性能蓄電池といったものを組み合わせて、AIが統合制御する分散型エネルギー社会への移行が提示されていました。こうした技術を背景に、宿泊施設が自立したエネルギーの拠点へと転換していくと考えられます。

エネルギーを自給自足できる施設の価値は、環境配慮にとどまりません。電力価格の変動や供給不安への耐性を高め、運営コストの安定化につながります。さらに、停電や災害等のトラブル発生時においても、機能を維持することができます。非常用電源としてではなく、平時から自立稼働するエネルギー基盤を備えることで、地域の防災インフラとしての役割も担います。

 

以前、本稿で宿泊施設の「ラスト・リゾート」について触れましたが、日本のような自然災害が多い地域においては、避難者や帰宅困難者の受け入れ拠点として発電・蓄電・制御を完備した施設の必要性が年々高まると考えられ、宿泊施設がその機能を備えることで、「泊まる場所」から「人を守る場所」へ転換し、地域社会からの信頼を獲得する新たな価値創出につながるでしょう。

こうした取り組みは、環境意識の高いZ世代やミレニアル世代、外国人の価値観とも親和性があります。彼らは単なる快適性を追求するだけでなく、施設の思想や理念、社会的責任といった点にも価値を見出しています。宿選びの基準に「倫理性」「サステナビリティ」といったキーワードが現れる中、エネルギーの自立は「未来志向」を体現するメッセージとなり、ブランド価値の源にもなります。

脱炭素のための投資は、コストと捉えられがちです。しかし、CES2026では、それが中長期的に信用と競争力を生む戦略的投資になり得ることを提案していました。自治体や地域との連携、金融機関や投資家からの評価向上・関係強化といった副次的効果も含め、今後、エネルギー戦略は経営の中核へと移行しつつあります。

宿泊施設がエネルギーの消費者から供給者へと立場を変え始めているという兆しを示したことで、観光DXは効率化の段階を超えて地域と未来を支えるインフラ設計の段階へと進んでいるのではないでしょうか。

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

(国際ホテル旅館2026年4月20日号)