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- 26.06.22
◆特別企画◆〝持続可能性〟を体験価値に【三井デザインテック】
三井デザインテック(東京都中央区)は4月、特注家具の設計から再資源化までを一貫支援する業界初のサービス「CIRCULAR FURNITURE(サーキュラーファニチャー)」を本格始動した。この取り組みの狙いと、先行導入事例として2月1日にリニューアルオープンした三井ガーデンホテル札幌(札幌市中央区)のデザインを通じて、〝持続可能性〟を軸にしたホテルづくりの考え方と、その実践プロセスを紐解く。
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(デザインディレクター/グル ープ長 田中 映子氏)
――サーキュラーファニチャーとは。
田中 三井不動産グループは、街づくりにおける環境との共生宣言「& EARTH for Nature」に基づき、2050年のネット・ゼロ(再生可能エネルギーや省エネによる温室効果ガスの排出量削減と、発生した温室効果ガスを植林・森林保全活動等で吸収・固定することで排出量を差し引きゼロにすること)達成、および2030年までの温室効果ガス排出量40%削減を推進しています。
サーキュラーファニチャーは、当社・三井デザインテックが設計・施工を担う企業として「デザインする責任」「つくる責任」を果たすべきとの考えのもと、& EARTH for Natureの重点課題の一つ「自然資源を循環させる」を体現する事業モデルとして取り組むものです。再利用または分解がしやすい家具を設計・採用し、使用後は回収・再資源化へつなげます。製造にかかるCO2排出量の算出やトレーサビリティ管理等も行い、循環モデルの構築を包括的に支援します。
将来的には、家具だけでなく「サーキュラーインテリア」へも領域を広げ、企画、設計、施工、製作、サービスのあらゆる面で循環モデルを確立し、競争力の強化や差別化につなげたいと考えています。
――サーキュラーファニチャーを始動した狙いは。
田中 資源の効率的な再利用と廃棄物削減に取り組み、経済成長と環境負荷低減の両立を目指す「サーキュラーエコノミー」への対応は、国内事業者にとって差し迫った課題になっています。
現在、東証プライム市場に上場する企業に対して、気候関連リスク情報の開示が段階的に義務化されるほか、2028年度からは建築物の計画から解体までのライフサイクル全体において排出されるCO2等の環境負荷を算定・評価する建築物LCA制度も導入される予定です。
宿泊事業者においても同様です。すでに海外OTAでは環境認証を取得したホテルを検索する「サステナブルトラベル」機能が設けられる等、欧米を中心にサステナビリティ重視の潮流が加速しています。
――社会全体で参画不可避な状況であることは理解していても、事業者側の負担や不安が決断を鈍らせている。
田中 従来の建設・改装とは異なる工程やコストが発生し、スケジュール遅延や合意形成の難航に繋がる可能性があることは事実です。ただ、国を挙げて循環型社会を推進する流れの中で、いずれは目を向けなければならないことだとも思います。
ホテルの建築・改装プロジェクトには、様々な属性の人たちが関わります。不動産所有者や投資者といったオーナーサイドもいますし、事業者サイドにも経営陣、開発・開業準備部門、運営責任者、マーケティング担当等がいます。それぞれの立場に寄り添いながら「サーキュラーエコノミーに対応する意義」を丁寧に言語化し、理解を得ることが大切だと考えています。
――三井ガーデンホテル札幌の改装プロジェクトは、どのような流れで企画したのか。
田中 三井ガーデンホテルズのブランドコンセプト「Stay in the Garden」をベースに、「WELLNESS HARMONY」というデザインコンセプトを設定し、北海道・札幌の自然や地域性を感じられる空間づくりを目指しました。
デザイン要素には「サステナビリティ」「ローカルカルチャー」「ピュアリティ」等、5つのエレメントを設定し、それぞれを持続可能性と結びつけながら〝滞在価値〟として成立させることを重視しました。デザインと並行して客室アメニティや消耗備品等も見直し、ゲストが手に取るものから空間全体まで、一貫してサステナビリティを表現する環境配慮型ホテルの世界観を構築しました。
サーキュラーファニチャーにも先行して取り組み、家具は「カーボンフットプリントを30%以上削減」「分解・再資源化しやすい設計」「埋め立てゼロ」を実践し、これらの条件を満たすものを積極的に採用しました。
一例として、フロントカウンターには三井不動産グループの保有林の認証木材を活用しました。部材を分解できる構造とし、再利用しやすい設計としたことで、通常設計と比べて43%のCFP(製品カーボンフットプリント)削減を実現しています。
既存資材の再利用も行いました。レストランの床面は既存フローリングを研磨して再利用し、艶を落としてマット仕上げにすることで現代的なデザインへと再生しました。「良いものを長く使う」発想も、サーキュラーインテリアを推進する上で重要だと考えます。
ロビーエリアでは、札幌の自然景観や大通公園から抽出した地形パターンをジオメトリックに解析しグラフィックとして抽出し、床や家具、壁面デザインに展開しました。また、札幌ゆかりのアーティストによる作品やリアルグリーンを用いたバイオフィリックデザインも取り入れ、自然とのつながりを感じられる空間を演出しています。
――客室は、一部の既存客室二つを一つにまとめた。
田中 3名以上で宿泊可能な多人数対応の客室タイプを増やしました。総客室数は改装前の216室から177室へ減少しましたが、インバウンドを中心としたグループ旅行者の宿泊需要に対応し、同伴係数の向上に伴う客室単価上昇が期待できます。
室内には再生ペットボトル由来のファブリック、ホタテ貝殻を再利用した壁材、FSC認証ハンガー、再生樹脂製備品等を採用し、タイルカーペットの約8割をリサイクル材で構成する等、ゲストが直接触れる部分の多くに環境配慮素材を採用しました。客室においても部材を単一素材ごとに分解可能な設計を徹底し、将来的な再資源化に配慮しました。

――プロジェクトでは様々な意見を交わしあった。
田中 前例の少ない施工方法や素材の導入を提案したため、プロジェクトメンバー内でも慎重に検討を進めました。丁寧にプロジェクトの意義を説明しながら、モックアップルームでの検証、材料試作を重ねて、実現に至りました。
何より私たちがサーキュラーファニチャー/サーキュラーインテリアを推進していかなければならないという強い思いを持っていましたが、今回は事業者の皆さんが、私たちの思いに早い段階からご理解下さったことが、プロジェクトを推進する原動力になりました。
三井ガーデンホテルズのブランドコンセプトが当社の取り組みと同じ方向性にあったことに加え、札幌のホテル市場の競争激化も、今回の意思決定に大きく関わっていたと思います。エリア内ではグローバルブランドの高級ホテルや国内大手ホテルチェーンの新規開業・改装計画が相次ぎ、単なる価格競争や流行に追随した施策だけでは明確な差別化を打ち出せない、という危機感を持っていました。
地域性やストーリー性を備えた独自の価値創出を模索していた中で、 私たちが提案した「WELLNESS HARMONY」のデザインコンセプトと北海道・札幌の自然や地域性を感じられる空間づくり、そこにサーキュラーの要素が加味されることが評価されたと考えています。
――サーキュラーファニチャー/サーキュラーインテリアのコンセプトに基づいて採用された部材やデザインの一つひとつに、数値的評価の裏付けや採用理由・経緯が伴っている。
田中 施設の価値を創るストーリーやコンセプトは、初期段階からプロジェクトの中心を支える軸になっていて、これを最後まで守り続けたことで、デザイン、素材選定、アート、施工、ブランド戦略までを一貫した思想で貫くことができました。このことが、単なるリニューアルプロジェクトではなく〝持続可能性そのものを体験価値化したホテル〟として完成させた要因になったと思います。
【CIRCULAR FURNITURE】
オフィスや宿泊施設向けの家具を対象に、再利用や分解がしやすい循環型設計を採用し、使用後は回収・再資源化へつなげる仕組みを構築する。設計・製造から CFP(製品カーボンフットプリント)の算出、DPP(デジタル製品パスポート)の実装、トレーサビリティ管理、回収・再資源化までを包括的に支援することで、家具のライフサイクル全体でCO2排出量削減を図る。
CFP算出はゼロック、DPP管理はdigglue、回収・資源循環はナカダイが連携して担い、三井不動産グループの環境ビジョン「& EARTH for Nature」を体現する事業モデルとして、持続可能な社会の実現を目指す。
(国際ホテル旅館2026年6月20日号)
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