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  • 24.06.25

第5回 〝お勉強〟の世界ではない【令和の「レベニューマネジメント」新常識】

第5回 〝お勉強〟の世界ではない【令和の「レベニューマネジメント」新常識】

私はよく、レベニューマネジメントのセミナーを依頼されるのですが、依頼者側との意識の食い違いに戸惑うことがあります。

依頼者は、私が「レベニューマネジメントの【解法】」を教えてくれると思い込んでいる節があります。学校や資格の試験のように絶対的な「正解」があって、正解を求める手段を勉強すれば習得できる、問題を解いて基礎を掴めば応用問題も解ける、と思われているようです。

これは多分に、レベニューマネジメントというものが様式化され、学問的に認識されているからではないかと思います。この連載ではたびたび触れてきましたが、レベニューマネジメントは誕生からまだ30年程度で、その間、多くの失敗を繰り返しています。「こうすれば絶対大丈夫」などという解法は存在せず、学問にもなり得ていません。

依頼者からは「初級」「中級」「上級」などと難易度別に教えてほしいと言われることも多く、その意図が分からなくもないので対応しますが、内心では「困ったな」と思っています。

〝お勉強さえすればスキルが獲得できる〟というのは、正直、意識が学校教育のままで止まっているのではないでしょうか。誰が画策したのか知りませんが、レベニューマネジメントをある種の「神格化」することでカリスマを生み、難解なものとした、不可思議なジャパニーズ・レベニューマネジメントは、普及を妨げる弊害にしかなりません。

読者の皆さんも経験してきたと思いますが、ホテル・旅館でのキャリアは、最初は決められた接客や業務をこなすのに精一杯ですが、少しずつ視野が広がり、宿泊客の困りごとや周囲の異変に気づき、未然に事故を防ぐなどの柔軟性・応用能力を身に着けていきます。

レベニューマネジメントも同様で、逐次発生する様々な状況に対して、データ分析や視点を変えながら臨機応変に対応する能力を育てることが重要です。こうした能力は座学ではく、実務の中で繰り返し直面しながら会得していくものです。

私が支援しているのは、まさにその部分。定期的に意見交換しながら分析能力を高めることが重要だからです。座学で得られる知識も重要ですが、本当に必要な能力は、常に変化する状況のもとで考え、決断する日々の積み重ねでしか得られません。

マーケティングの手法においては、何が正解かはやってみないと分かりません。大手菓子メーカーは巨額のマーケティング費用をかけて新製品を発売し、CMを大量に流してコンビニの棚を占拠します。それでも、1年後にコンビニの棚に残っている製品はごくわずかで、失敗が当たり前なのです。レベニューマネジメントはそのようなものなのです。

レベニューマネジメントを「特別な学問」と捉える時代は終わりました。マーケティング業務として遂行することが、ホテル・旅館業に求められると思います。

 

【令和の「レベニューマネジメント」新常識】 小林武嗣氏(C&RM社長)

(国際ホテル旅館2024年6月5日号)

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