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  • 25.02.20

第16回 ホスピタリティサービス工学から視るCES2025現地レポート(2)【視点を増やして観光DXを加速】

前回の本稿では、1月に米国ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES2025」を視察したレポートをご紹介しましたが、2月にはHCJ(国際ホテル・レストラン・ショーHOTERES JAPAN、フード・ケータリングショーCATEREX JAPAN、総合厨房・フードサービス機器・厨房設備機器展JAPAN FOOD SERVICE EQUIPMENT SHOW)が開催されました。

CESではAI=人工知能とソフトウェアを基軸に、センサーやカメラ等のハードが連携し、特に暮らしの未来を示唆するような展示内容が印象に残りました。一方、HCJは作業効率を高め、生産性を担保する配膳、運搬、調理を補助するロボットの展示が目立ちました。今年東京で展示されていた内容が、10年前にCESで見た内容とほぼ同じだったことに、明確な軸のズレと違和感を覚えました。

現在、ロボットは大半が中国発のメーカーで占められ、日本製も少なく、今後の市場性は不透明だと言わざるを得ません。そういった背景の中でハードを全面にした展示が目立ったことに驚きました。

ロボットには統一した規格があるわけでなく、搭載されているセンサーの位置がバラバラだったり、認識精度に差が生まれたりして、不具合や衝突事故のリスクが完全に拭えないことが課題になっています。この解決には、少なくとも国内で稼働するロボットに一定のガイドラインを設け、規格や技術を標準化する必要があります。

その上で「どこでも、いつでも、問題なく」動けるロボットとして活躍できる環境が整うのですが、この環境づくりに役立つのがAIです。

世界的なIT企業が生成AIと言われる基盤を確立していますが、これを活用して観光産業に特化したソフトウェアを構築することで、ロボットが活躍しやすい環境をつくることができます。

宿泊施設をはじめとする観光産業は人的な労働力で成り立っています。人は優れた指向性を持ち合わせており、人の能力や思考に機械が追いつくことは大変難しく、かつ、ロボット単体だけでなく、センサーやカメラ等の様々なハードと、それらを連携して動かすソフトウェアが必要です。

ただ、ロボットが活躍するタイミングはいずれ訪れます。10年前から机上で考えていたロボット活用の課題を、10年後の今、多くの業界関係者の皆さんが共有していることに、タイムラグ痛感しています。日本だけでなく世界の、観光産業だけでなく産業界全体の潮流を広く見渡した上でロボットのあり方と活用を捉えてほしいと思います。

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

 

(国際ホテル旅館2025年2月20日号より)