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- 25.10.06
第9回 〝万博以降〟のレベニューマネジメント【令和のレベニューマネジメント新常識】
当初は否定的な意見も多かった大阪・関西万博ですが、東京五輪と同様、開催されれば評判が評判を呼び、大成功といえる盛況ぶりを見せています。
大阪エリアを中心にホテルの単価は上昇しました。もともと活発だったインバウンド需要も加速し、訪日外国人旅行者数は8月までの時点で昨年の実績を大きく上回り、4000万人の突破もほぼ確実視されています。
ただ、こうした観光客の増加はまだ局所的な状況にとどまっています。宿泊客におけるインバウンド比率が60%を超える地域もあれば、1割程度に留まっている地域もまだまだ多く、集中している地域ではオーバーツーリズム等による弊害やトラブルも伝えられています。
日本の中でも日本海側は、非常に魅力的な食や自然があるにもかかわらず、交通の便が悪くインバウンドへの訴求が届きにくい傾向にあります。そのため、太平洋側の都市に到着したインバウンドをいかに日本海側へ誘導するかが課題になるでしょう。
そのためには広域的な観光導線の整備が不可欠で、「ゴールデンルート」のようなインバウンドが回遊する導線の形成が主要課題だと言えます。
山陰地方を例に挙げると、京都を起点とした山陰本線を活用するルートが考えられます。京都から城崎に向かい、香住→鳥取・米子→松江・出雲→萩→下関、そして福岡空港へと至る「新ゴールデンルート」を構築できるかもしれません。
地元在住者の皆さんは「地方路線に長時間乗るなんて無理」と思うかもしれませんが、これはあくまでも日本人の感覚です。
確かに新幹線のような快適さはありませんが、外国人から見れば在来線も十分に快適ですし、乗車時間の長さよりも鉄道が待ち時間なく定時運行することの方がより快適だと捉えるでしょう。
一部の国・地域を除き、広い国土で景観にも変化の少ない大陸の人々からすれば、日本の変化に富んだ地形や景色を車窓から楽しめること自体が観光資源になり得ると言えます。私たち日本人がインバウンドの行動を全て理解することは難しいかもしれませんが、日本人の視点や感覚から離れて推測・検討することは大変重要なことだと思います。
政府は2030年の訪日外国人旅行者数の目標値を6000万人としていますが、今年の上振れを見ていると、さらなる成長も見込めます。一方で、特定の観光地に集中することによる観光公害や、特定の国・地域の旅行者を槍玉に挙げることによる差別意識の助長にも繋がりかねません。こうした動きが広がればインバウンド側の心証も悪化し、反日運動や訪日旅行の取り止めに発展する恐れもあります。
つまり、インバウンドの分散が進まなければインバウンド市場は失速し、6000万人の目標に届かない可能性もあります。
すでに観光産業は、日本経済における主要な外貨獲得手段の一つとなっています。この希望の灯を絶やさないために政府・行政は積極的に動くと思いますし、現時点でインバウンドが少ない地域においても万博後の観光客分散を見据えて将来投資を進めることが重要になるでしょう。
小林武嗣氏(C&RM社長)
(国際ホテル旅館2025年10月5日号)
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