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  • 26.09.24

第33回 自動運転レベルで読み解くホテルPMSの自動化と業界特化型SIの役割【視点を増やして観光DXを加速】

今回は、人にしか果たせない質の高いホスピタリティを守り抜くために重要なビジョンについてお話しします。

 

自動車などの「自動運転レベル」をご存知でしょうか。国の基準では、システムの支援がない「レベル0」から、システムが全てを管理する完全自動運転の「レベル5」まで、段階的に自動化の度合いが整理されています。

この物差しが分かりやすいのは、「どこまでを機械に任せ、どこから人が担うのか」という責任の境界線を明確に示している点にあります。

この考え方は、ホテルオペレーションやPMSの現在地を考えるうえでも、有効な補助線になると思います。

ホテル運営に置き換えると「レベル0~ 2」はすでに通過点です。予約台帳への記入からチェックイン手続きまで、全てを人の手で行うレベル0。PMSが予約管理やアラートを担う一方、判断や入力の大半をスタッフが担うレベル1と捉えられます。

現在、多くのホテルはレベル2に位置していると考えられます。OTA 連携による在庫・料金の自動調整、キオスク端末によるセルフチェックイン、チャットボットによる多言語の一次対応など、システムが「提案」や「下準備」までは行っても、最終判断と例外対応は人が担います。

レベル3以降は「業界を知るSI(システムインテグレーター)」なしに到達することは難しくなります。レベル3はチェックイン・アウト手続き、客室清掃の進捗管理、稼働率に応じた料金設定などをAIが自律的に行い、例外時だけスタッフが対応する、という状態です。

 

ここで重要なことは、自動化の目的は人を減らすことではなく、定型業務から解放された人材を、ゲストと向き合う時間へ再配置することにある、という点です。私が企画・開発に携わった「変なホテル」は、まさにその実証実験であり、実践例でした。

さらにレベル4は、施設内で人の介入なく AI が運営を完結する段階。そしてレベル5は、複数施設・複数ブランドをまたいで運営を自律化する究極形と考えられます。

 

ここで強調したいのは、この壁を越える主役は汎用のITベンダーではなく、ホテル運営を知り尽くした業界特化型のSIだということです。

オーバーブッキング時の客室アサイン、団体客と個人客の混在、レイトチェックアウトの可否判断、深夜帯の突発対応、宴会・レストランと宿泊の連動――これらはいずれも、仕様書に書き尽くせない現場の暗黙知の塊です。それを知らない設計では、いずれ例外処理で破綻します。

業界特化型SIの層の厚さが、そのままホテル産業の競争力を左右すると言っても過言ではありません。

 

未来のPMSは、ホテル運営を熟知したパートナーと「共に育てる」ものへと変わっていくでしょう。その転換こそが、観光 DX を加速させる出発点になるはずです。

 

藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)

 

(国際ホテル旅館2026年9月20日号)