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- 本紙好評連載
- 26.10.22
第34回 ホテル開発を核とした地域のスマートシティ化-街の機能は設計図の段階で決まる【視点を増やして観光DXを加速】
ホテルは「街の機能」を最初に実装できる唯一の建物
前号では、ホテルオペレーションの自動化を自動運転のレベルになぞらえて整理しました。しかし、一台の車がどれほど賢くなっても、それだけで街の渋滞は解消するわけではありません。信号や道路、他の車とつながって初めて、交通全体が最適化されます。
ホテルも同じです。一棟の中で自動化を突き詰めた先には、必ず「この街全体はどうあるべきか」という問いが待っています。
なぜホテルが地域開発の「核」になり得るのか
商業施設やオフィスは、基本的に既存の需要を見込んで建設されます。これに対してホテルは、滞在人口そのものを生み出す施設です。一棟が稼働を始めれば、周辺の飲食、交通、小売などの採算性が高まり、新たな事業や業態も成り立つようになります。
開発の順序という点でも、ホテルは早い段階で着工することが多く、開業後は24時間365日稼働し、人・モノ・情報が集まる拠点になります。つまりホテルは、街の基盤となる機能を早い段階から実装できる建物なのです。地域開発において、ホテルが「アンカー(錨、要)」と呼ばれる理由もここにあります。
スマートシティ化は企画段階で決まる
ここで強調したいのは、タイミングの問題です。
エネルギーの融通、交通データの連携、防災時の拠点機能、周辺施設とのシステム連携──これらは全て、配線や通信、データの受け渡しをどう設計するかに左右されます。竣工後に後付けしようとすれば、費用は膨大に膨らみ、断念せざるを得ないケースも少なくありません。街の機能は、設計図を描く段階で大きく方向づけられるのです。
実のところ、ホテルを地域の核とする発想は、すでに国の制度にも表れています。観光庁の補助制度には、宿泊施設を中心とした地域一体の計画を支援対象とするものもあります。ただし、制度の重心は既存施設の再生にあり、新規の開発計画に地域との連携をどう組み込むかは事業者自身の判断に委ねられる部分もあります。地域のスマートシティ化の成否は、まさにこの判断にかかっていると言っても過言ではありません。
国内のスマートシティ構想で頓挫した例の多くが、技術が先行する一方で、そこで日々の事業を営む当事者の視点が十分に組み込まれませんでした。
その点、ホテルが核となることには大きな強みがあります。ホテルは毎日のオペレーションを通じて、自治体や交通事業者、周辺の店舗などと関係を構築しています。この〝当事者性〟こそが、構想を実装へ変える力になり得ます。
これからのホテル開発は「街の機能を実装する」計画へと変わり、ホテルで働く人や街に暮らす人がその機能を支えるでしょう。この視点こそが、観光DXを次の段階へ進める出発点になるはずです。
藤原猛氏(タップ ホスピタリティサービス工学研究所 所長)
(国際ホテル旅館2026年10月20日号)
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