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- 本紙好評連載
- 25.09.08
第8回 9月以降の宿泊予約見通し【令和のレベニューマネジメント新常識】
今年の7月から8月は、様々な要因から難しい対応を迫られたホテル・旅館も多かったのではないでしょうか。予算達成については各施設それぞれだと思いますが、総じて言えるのは「リードタイムの短縮化」だったようです。
7月は災害をめぐる噂というか予言のようなものが影響し、香港をはじめ東アジア地域からの訪日外国人客が減少する事態が発生しました。夏休みに入ると需要を取り戻すような流れもありましたが、8月21日以降は動きが鈍り、特に最後の週末である30日・31日が月末に重なったことでブレーキがかかった印象もあります。
大阪地区は、万博効果で好調な動きが目立ちました。その分、他の地域から客足を奪ってしまった可能性も否めません。万博は10月13日まで開催しており、話題性も高いことから9月の集客も期待できるでしょう。ただし、全体的に価格水準が高止まりしていることから、平日などのビジネス需要の落ち込みには注意が必要です。
一方、東京地区は現時点でオンハンド(現時点で入っている予約件数)が弱いようです。
コロナ禍前の時点では、9月は年間で最もインバウンド需要が弱く、ピーク期に比べると10%程度は下回る傾向にありました。さらに、空室が出ている状態だと訪日外国人客も気持ちに余裕が出て予約を急がなくなってしまい、結果的に予約決定時期が遅れがちになります。
少なくとも10月ごろまでは、日本の観光需要は大阪・関西万博を中心に回るでしょう。インバウンドの動きとして、関西にフライトで到着し、その後で他の地域を巡る流れになると、どうしても他地区の宿泊稼働は下がる方向になっていきます。
以前この連載でも触れましたが、最近の訪日外国人客は到着地のホテルで部屋を借りて荷物を置き、そこを拠点に身軽な装備で全国を巡る、というスタイルが増えているようです。
実は、このことがリードタイム短縮の要因にもなっていて、日本に来てから次の訪問場所と宿泊先を決めるので予約の直近化が進んでいると見られます。そのため、長期の宿泊予約を獲得するホテルがある(このホテルだけはリードタイムが長い)一方で、簡易宿泊施設を含む短期滞在需要も拡大しています。
レベニューマネジメント戦略において、これは新たな課題です。これまではリードタイムの長い訪日外国人客が早い段階から予約を埋めてくれて、高単価維持の支えとなっていました。しかし、リードタイムの短期化が進むと、予約を早く取りたいという不安な心理から、安値販売に傾きやすくなります。
特にAIを用いた料金設定は、自社の過去の売り方と周辺施設の料金に基づいて算出するので、今のような条件下では安値を指示するでしょう。
客室数が大きい大規模ホテルなら、入れ込み状況に応じて段階的に料金を引き上げることで収益機会のロスを最小限に抑えられますが、客室数が小さい施設は気がついたら安値で完売してしまった、ということも起き得ます。こまめなチェックと柔軟な調整が必要となります。
小林武嗣氏(C&RM社長)
(国際ホテル旅館2025年9月5日号)
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